上手な管理会社活用法!管理委託費削減で予算不足解消!
【元大規模修繕業界担当者が教える知って得する豆知識-Column.26】
一般的なマンションでは管理会社に管理業務を委託していると思いますが、その管理会社を上手に活用しているでしょうか?
ほとんどのマンション管理組合は、管理業務を管理会社に一括して委託しています。実際、国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」では7割近くのマンションが一括委託しているという調査結果もでています。
そこで、ただ管理業務を管理会社に委託するだけでなく、上手に活用することでより快適な生活ができるようになるのです。
また、管理業務を管理会社に委託した場合、マンション側は毎月居住者から納められる管理費の中から「管理委託費」を支払う必要がありますが、この管理委託費を見直して削減できれば大規模修繕の予算不足を解消できる可能性があるのです。
ここからは、マンション管理会社を上手に活用する方法と管理委託費の見直し方についてお話していきます。
このページの目次
1.マンション管理会社を上手に活用する方法
ほとんどのマンションの管理組合は、日々の管理業務を管理会社に委託しています。
先程紹介した通り、国土交通省が実施した「平成30年度マンション総合調査」の「管理事務の実施状況」を見ると、「基幹事務を含め管理事務の全てをマンション管理業者に委託(一括委託)」が74.1%にもおよび、「管理組合が全ての管理事務を行っている(一部委託)」が6.8%のみという結果がでてきます。
(出典:国土交通省|平成30年度マンション総合調査結果(概要編))http://www.mlit.go.jp/common/001287412.pdf
一括委託した場合、マンションの維持管理に関わる業務をすべて管理会社に任せて、毎月一定額の管理委託費を支払います。マンションの管理組合は基本方針と管理業務のチェックだけで済むので管理面の手間がなくなります。
一部委託した場合は、清掃や設備点検などの専門業者に対して、マンション管理組合が管理会社と分離して依頼する形になります。
1-1.マンション管理会社の上手な活用法
マンション管理会社を上手な活用法として、一番は管理会社とコミュニケーションをとることです。
管理組合の役員の方は、管理会社から派遣されている管理員(管理人)と定期的に連絡を取り合い、必要に応じて意見やアドバイスを求める必要があります。
その際注意したいのは、上から目線にならないようにするとともに、思いつきや感情的に話すのではなく、マンションの管理組合としての優先順位を明確にして管理員に伝えることが大切です。
管理会社の管理員は専門知識や経験を持った人が担当するので、管理組合側もその力を存分に発揮してもらえるように接していかなければなりません。もちろん最終的な決定権は管理組合にあるので、あくまでサポート役として上手に活用していく必要があります。
また、管理員の対応や行動に問題があるときは率直に指摘して改善を求めなければなりません。
管理会社を上手につかいこなすという意識が必要であり、緊張感を持って仕事をしてもらうためには問題があるときはしっかり管理組合の意志を伝えることが重要になります。
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2.管理委託費の見直しで大規模修繕の予算不足を解消
また、マンションでは一般的に12年周期で大規模修繕工事を実施しますが、多くのマンションで修繕積立金が不足するトラブルに直面しています。その対策として「工事範囲を狭める」「一時金を徴収する」などの対策が行われます。しかし、居住者との合意形成が難しいため、予算不作が解消されないケースが多々あるのです。
その大規模修繕の修繕積立金不足を解消するために行いたいのが「管理委託費の見直し」です。
マンションの管理業務を一括で管理会社に委託した場合、管理費の中から「管理委託費」の支払いが必要になります。
この管理委託費は毎月一定額支払うようになりますが、最初に契約したきり何年もそのままというマンションが実に多いのです。
一般的に管理会社へ支払う管理委託費の相場は「一戸あたり13,000円~15,000円」程度と言われています。
そこで、例えば総戸数150戸のマンションで管理委託費が一戸あたり15,000年だとすれば、年間で「150戸×15,000円=2,250万円×12ヶ月=27,000万円」となります。さらに、大規模修繕を12年周期で実施しているマンションで考えると、「年間27,000万円×12年=324,000万円」と12年間で3億円以上のお金を管理委託費として支払っているのです。
そこで、その管理委託費が10%~20%削減できれば、年間2,700万円~5,400万円、12年であれば34,000万円~64,800円ともなり、このお金を大規模修繕に充当できれば予算不足のトラブルを解消できる可能性は高くなります。
2-1.管理会社に支払う管理委託費の削減手順
今まで一度も管理委託費を見直していなかったマンションで修繕積立金が不足しているとき、管理委託費が削減できればそのお金を修繕積立金に回すこともできます。また、管理委託費を見直す作業を通して管理業務の詳細を洗い出すことになるので、業務改善にも一役買ってくれます。
2-1-1.管理委託費の削減手順
管理委託費の削減手順は以下のようになります。
削減手順1:現在の管理業務の状況を把握する
理事会などで現在の管理委託契約の内容と管理業務の実施状況などを把握して問題点を洗い出す。
削減手順2:コンサルティング会社の意見を聞くほか、別の管理会社の見積もりを集める
コンサルティング会社の専門家の意見を聞くほか、他社の見積もりを徴収して管理委託費の相場を知っておくことは交渉材料として有効になります。
削減手順3:管理会社に対して見直しを要請する
現状と同じような業務仕様を前提に文書で管理会社宛に管理委託費の見直しを要請します。
その際、普通郵便よりも内容証明郵便が望ましいでしょう。
削減手順4:管理会社と交渉する
見直し要請に対する管理会社側の回答をもとに、どの程度見直しができるのか具体的な金額を交渉します。
削減手順5:居住者向けに見直し資料の配布や住民説明会の開催
現在の管理業務の問題点から管理委託費の見直しに至るまでの経緯を資料にまとめて居住者に配布します。
塗料配布に合わせて、住民説明会を開催して意見を聞くことも大切です。
削減手順6:マンション管理組合の理事会としての方針を決定
管理会社との交渉結果を理事会や居住者に報告し、現在の管理会社への委託を継続するのか、または契約を見直すのかなど、今後の方針を理事会で決定します。
削減手順7:マンション理事会の臨時総会の開催
管理費の削減から管理委託契約の再締結、管理会社の変更などについて議案を出して決議を取ります。
(過半数で可決)
削減手順8:管理会社と各種契約の締結
総会決議に基づいて必要な契約を結べば手続きは完了です。
以上が管理委託費を削減するための必要な手順になりますが、ただ単に管理委託費を安くしてくれと要請するのは逆効果になる可能性があります。
管理委託費の削減は、あくまで現在の管理業務の質やほかのマンションと比較して割高な部分を是正することが目的です。
「安かろう、悪かろう」では意味がないので、その点はしっかり認識して交渉する必要があります。
3.まとめ
今回はマンション管理会社を上手に活用する方法と管理委託費の削減についてお話しました。
ご紹介した通り、多くのマンションは管理業務を管理会社に一括で委託していますが、その管理会社を上手に活用するコツはしっかりコミュニケーションを取ることです。
また、管理会社にマンションの管理業務を委託すれば、毎月一定額の管理委託費の支払いが必要になり、規模によっては大規模修繕の修繕積立金の不足を招くことがあります。そこで、管理委託費を削減できれば修繕積立金に充当することができるので、大規模修繕の予算不足が解消できる可能性があるのです。
今まで管理委託費を一度も見直していないというマンションは、管理業務に対して適正な管理委託費かどうか検討してみてはいかがでしょうか。