大規模修繕の建物診断・劣化診断とは?実施する目的や費用を解説

建物診断・劣化診断の必要性や費用を解説!

建物診断・劣化診断の必要性や費用を解説!

分譲および賃貸マンションでは、一般的に12年~15年周期で大規模修繕工事を施工しています。
分譲マンションは、管理組合が管理している「長期修繕計画」を基に施工を計画しますが、賃貸マンションは各戸の住宅部分以外の共用設備に関して、オーナーの義務として修繕工事を施工する必要があります。

その大規模修繕工事を施工するにあたって、事前に行うのが「建物診断・劣化診断」です。
建物診断・劣化診断は、大規模修繕計画や予算を検討するうえで重要な情報の一つになり、建物診断・劣化診断を行うことで、計画や予算が立てやすくなります。

とはいっても、これから初めて大規模修繕工事を施工するマンションでは、「建物診断・劣化診断とは?」と基本的なことが分からないと思います。

そこで、この記事では大規模修繕工事の建物診断・劣化診断について詳しくご紹介していきます。

このページの目次

1. 大規模修繕の建物診断・劣化診断の必要性

大規模修繕の建物診断・劣化診断の必要性

マンション大規模修繕は、建物に生じた経年劣化や不具合を修繕および改修する工事として、12年~15年周期で実施されるマンションの一大行事になります。

その大規模修繕工事は「長期修繕計画」に基づいて実施されますが、あくまで計画なので事前調査として、建物の劣化診断を行い、現在の劣化状況を把握する必要があります。

建物診断・劣化診断を行うことで劣化状況が把握できるため、長期修繕計画とのズレを調整して、修繕積立金を含めて計画通りに工事を実施することができます。

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2. 大規模修繕の建物診断・劣化診断とは?

大規模修繕の建物診断・劣化診断とは?

建物診断・劣化診断とは何なのか?について、簡単には住宅の健康診断のようなものです。
文字通り、マンション外部設備・内部設備の各所をチェックして、建物に生じている劣化や不具合の状況を把握するために行われます。

マンションで施工される大規模修繕工事では、事前に建物診断・劣化診断を行います。建物診断・劣化診断をせずに、いきなり大規模修繕工事を施工することは基本的にまずありません。

この建物診断・劣化診断に関しては、一般的に建物診断会社や設計事務所、建設会社などコンサルタントサービスを提供している、建築の専門家に診断を依頼します。

3. 大規模修繕の建物診断・劣化診断の目的

大規模修繕の建物診断・劣化診断の目的

建物に生じている劣化や不具合をチェックして、修繕および改修が必要なのか不要なのかの判断は素人ではできません。
そこで、建物診断会社や設計事務所などの建築の専門家に依頼しますが、その際、建物診断・劣化診断を行う目的を明確にしておきます。

一般的に、建物診断・劣化診断を実施する目的には以下のようなポイントが挙げられます。

大規模修繕の建物診断・劣化診断を実施する目的

・建物住宅の劣化・不具合状況の把握
・大規模修繕の実施時期の検討
・修繕内容および工法、使用材料の検討
・概算工事予算の算出
・図面、仕様書の作成 など

基本的に建物診断・劣化診断は、住宅全体の劣化や不具合の状況を把握し、その劣化や不具合に対して、適切な修繕方法や予算を策定する目的で行います。マンションの快適な居住環境や資産価値の維持・向上を図るためには、建物診断・劣化診断で現状を把握したうえで、適切な修繕計画を立てることが重要です。

4. 大規模修繕の建物診断・劣化診断のメリット

大規模修繕の建物診断・劣化診断のメリット

建物診断・劣化診断を実施する一番のメリットは、マンションで現状発生している劣化や不具合が発見できることです。 そして、マンションの外部・内部で発生している劣化や不具合を専門家に分析してもらえば、修繕工事の優先度を判断してもらえます。

それにより、一度の工事で無駄なく危険な箇所の補修が行えるようになるほか、工事が必要ない箇所の判断もできるので、工事費用を抑えることも可能になります。

また、劣化や不具合が明確になれば、修繕計画や工法、使用材料が明確になるので、図面・仕様書、概算工事予算の策定がスムーズに進められるメリットもあります。

5. 大規模修繕の建物診断・劣化診断の内容

大規模修繕の建物診断・劣化診断の内容

建物の劣化や不具合を把握すると一言でいっても、マンションの外壁や屋上などの外部から、共用廊下や階段、バルコニー、建具・鉄部類、サッシ、手摺、設備関係など建物住宅内部までチェックするポイントは多岐に渡ります。

では、建物診断・劣化診断で具体的にどのような内容の診断を行うのか?について、一般的に行われるチェック内容をご紹介します。

5-1.劣化が発生する傾向を分析するために「完成図(竣工図)などの書類確認」

まず、マンションの完成図(竣工図)および仕様書、修繕履歴、管理規約などの書類確認を行います。

主に、建物の特徴と使用材料の確認、劣化や不具合が発生する傾向を分析するための調査になります。

5-2.劣化状況を把握するための「目視調査(触診、打診を含む)」

マンションの外部(外壁、屋上など)、内部(共用廊下・階段、手摺、バルコニー、建具・サッシ類、鉄部など)に関して、専門家が目視調査を行いますが、メインは共用部分になります。

その際、目視だけでなく手が届く範囲で、触診や打診棒を使って打診などの調査を行います。また、劣化状況に応じて専門の機器や破壊を伴う診断を行うケースもあります。

5-3.新たな劣化を発見するための「居住者アンケート」

マンションに居住している方を対象に、生活の中で感じているマンションの劣化や不具合、要望などのアンケート調査も行われます。居住者アンケートを実施することで、建物診断・劣化診断では判明できないような劣化や不具合が発見できるので、有益な情報源になります。

また、アンケートを実施することで、居住者に大規模修繕工事に対する意識を高めてもらえる効果も期待できます。
大規模修繕工事は普通に生活している中で行われる工事なので、工事関係者だけでなく居住者を含めてマンション全体での取り組みが求められます。

建物診断・劣化診断では、主に上記内容の診断が行われますが、大規模修繕工事を実施する時期や予算を決めるうえでも、特に重要な工程になります。

6. 建物診断・劣化診断の基本的な流れ

建物診断・劣化診断の基本的な流れ

ここまで、建物診断・劣化診断とはどのような調査を行うのか説明しましたが、実際に依頼するときの流れをご紹介します。

ただし、依頼する調査会社によって診断サービスを行う流れは異なるため、依頼するときは診断の流れを確認するようにしましょう。
建物診断・劣化診断を実施するとき、マンション側の立ち合いが必要になるので、流れや日程の確認は必須になります。

6-1.診断する業者と打合せ

まずは、建物診断会社や設計事務所など依頼する業者と打ち合せを行います。
診断する項目など詳しいことまで決める必要はありませんが、具体的な診断方法や診断に関わる費用について打ち合せを行います。

6-2.予備診断を実施し診断内容の決定

診断方法や費用がある程度決まったら、診断会社が予備診断を行って実際の診断内容を把握していきます。

実際にマンションを訪れて、保管されている完成図(竣工図)・仕様書、長期修繕計画(修繕積立金など)、修繕履歴などの書類の確認を行うとともに、居住者アンケートの結果を精査して実際の診断内容を決定します。居住者アンケートは、依頼するコンサルタントが調査診断業務の中で実施します。

6-3.現地調査の実施

予備診断で診断内容が決定したら、日程を調整してマンションでの現地調査を実施します。
本診断のための事前調査になり、目視のほかに手が届く範囲で触診や打診棒を使って打診など行い劣化状況を把握していきます。

6-4.建物診断・劣化診断の実施

建物全体の共用部分に対して目視調査、打診調査、機器の作動調査を行うとともに、依頼内容に応じて以下の調査も行われます。

建物診断・劣化診断の調査項目

・外壁などのコンクリート中性化試験
・塗装などの表面塗膜引張力試験
・給排水管内部の内視鏡調査および抜管調査
・バルコニー立入調査

6-5.建物調査報告書の提出

建物診断・劣化診断を実施したあと、建物診断報告書を作成します。

マンション側には、建物の部位ごとに平面図に落とし込んで、写真とともに劣化状況の評価および判定結果をまとめた建物調査報告書が提出されます。そのほかの調査項目に関しても、調査結果の詳細の報告があります。

6-6.理事会・説明会にて報告

建物調査報告書をマンションの理事会に報告するとともに、大規模修繕工事の必要性に関しての説明会を開催します。

マンション内で発生している建物の劣化状況を説明することで、多くの居住者に大規模修繕工事の必要性を認識してもらえるようになります。

6-7.アフターフォロー

依頼する診断会社によって違いはありますが、アフターフォローサービスとして大規模修繕の進め方などのアドバイスが得られます。

また、上記の理事会および居住者への説明も、依頼すれば代わりに説明してくれる診断会社もあるので、サービス内容は事前に確認しておきましょう。

一般的な建物診断・劣化診断の流れを説明しましたが、依頼する業者によって進め方に違いがあるので、診断する業者との打合せの際に進め方はしっかり確認します。また、基本的に建物診断、劣化診断を実施するときは、マンション側の立ち合いが必要になるので、管理組合で担当者は選任しておきましょう。

7.大規模修繕に伴う建物・劣化診断の無料診断と有料診断の違いとは?

大規模修繕に伴う建物・劣化診断の無料診断と有料診断の違いとは?

建物診断・劣化診断の流れをご紹介しましたが、無料診断と有料診断があるのはご存知でしょうか?
無料診断と有料診断でのサービスの違いは?となりますが、無料と有料では診断する項目に違いがあります。

7-1.建物・劣化診断の無料診断の特徴

前項でご紹介した、建物診断・劣化診断の実施内容の中で、目視調査および打診調査の簡易的な項目が無料診断の範囲になります。

目視と打診調査については、有料診断と同じ内容で行われるので、マンション全体の劣化状況は把握できます。
ただし、あくまで共用部分の目視と打診調査になるので、コンクリート内部の状態まで詳しく調べることができません。

7-2.建物・劣化診断の有料診断の特徴

有料診断は、上記の無料診断の項目に加えて、外壁などのコンクリート中性化試験や表面塗膜引張力試験、給排水管内部の内視鏡調査など、専用の機器を使ってより精度の高い調査を行います。

また、マンションの共用部分だけでなく、各居住者の専有部分の劣化状況も調べてもらうことができます。

無料診断と有料診断では、調査項目に違いがあります。そこで、築年数の新しいマンションの場合、簡易的な無料診断でも問題ないかと判断できますが、築年数の古いマンションは、有料診断でコンクリートや内部の鉄筋の腐食状況まで診断してもらうことをおすすめします。

8. 大規模修繕の建物診断・劣化診断の費用相場

大規模修繕の建物診断・劣化診断の費用相場

前項でご紹介した通り、目視調査や打診調査といった簡易的な建物診断は無料で行ってくれますが、より詳しい調査を依頼する場合は有料になり、マンションの規模によって調査費用が必要になります。

有料診断の費用相場に関しては、規模や調査項目で異なるため、依頼する建物診断業者に見積もりを依頼する必要がありますが、一般的に以下の費用が相場になります。

有料建物診断・劣化診断の費用相場

・30戸以下の小規模マンション:20万円~40万円
・50~100戸の中規模マンション:30万円~80万円
・200戸以上の大規模マンション:50万円~100万円

おおよそですが、以上が費用相場になるので、有料診断を依頼するときは、修繕積立金の予算と照らし合わせながら調査項目を検討しましょう。

9. 建物・劣化診断と合わせて「耐震診断」の実施でさらに安全性を確認

建物・劣化診断と合わせて「耐震診断」の実施でさらに安全性を確認

ここまで、マンション大規模修繕工事に伴う建物診断・劣化診断についてご紹介しましたが、予算に余裕があれば追加で耐震診断を行うと、より詳しく建物の状態が把握できます。

耐震診断は、マンションの構造図や構造計算書をもとに耐震性能を計算したのち、現地調査を実施して耐震性能を診断するものです。一般的な耐震診断では、1次診断から3次診断まで行い、耐震性能の判定が行われます。

耐震診断の結果は、構造耐震指標「Is値」で算出されますが、Is値が0.6未満のマンションは耐震補強を検討しなければなりません。中でも、1981年5月以前に建設されたマンションは、旧耐震基準で建てられているマンションが含まれるため、耐震診断を行い、新耐震基準に満たないマンションは、耐震補強工事を検討する必要があります。

しかし、耐震診断および耐震補強には、それなりの費用が必要になるので、大規模修繕工事の予算に余裕があれば検討することをおすすめします。

10. まとめ

今回は、マンション大規模修繕工事に伴って実施する建物診断・劣化診断について詳しくご紹介しました。
建物診断・劣化診断は、建物の健康診断のようなもので、マンション外部・内部各所をチェックして、建物に生じている劣化や不具合の状況を把握するために行われます。

ほとんどのマンション大規模修繕工事で、事前に建物診断・劣化診断を実施しますが、一度の工事で無駄なく危険な箇所の補修が行えるようになるほか、工事が必要ない箇所の判断もできるので、工事費用を抑えることもできます。

その建物診断・劣化診断には、簡易的な無料診断と建物を詳細に調査する有料診断があり、築年数に応じて調査項目を検討する必要があります。

マンション大規模修繕工事では、建物診断・劣化診断が重要なポイントになるので、コンサルタント会社としっかり協議して、的確に実施するように進めましょう。

また今後、建物・劣化診断をスムーズに進めるためにも、管理会社や診断会社、管理組合間でのトラブルがないかどうかを事前に調べておく必要があります。場合によってはトラブルで、大規模修繕はおろか診断そのものも先送りになってしまうこともあるので注意が必要です。下記リンク先には大規模修繕時に注意すべきポイントをまとめましたので、是非一度ご参照くださいませ。

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