大規模修繕に確認申請は必要なのか?多くの大規模修繕は不要

確認申請は必要なのか?大規模修繕の確認申請を解説

大規模修繕に確認申請は必要なのか?多くの大規模修繕は不要

マンションなどの建物を建設するとき、工事を着手する前に建築主事あるいは民間の指定確認検査機関に対して「建築確認申請」を提出しなければなれません。

そこで、マンションの大規模修繕も確認申請の提出義務があるのか?
と、疑問をお持ちの方もいるかと思いますが、基本的に建築基準法で定義されている「大規模な修繕・模様替」でも確認申請が必要になります。

ただし、一般的なマンション大規模修繕の多くは確認申請の提出は不要なのです。
そこで、ここからは確認申請が必要な建築物の種類や必要書類などの説明に合わせて、大規模修繕の確認申請の提出の必要性についてご紹介いたします。

このページの目次

1.確認申請が必要な建築工事の種類と定義

確認申請が必要な建築工事の種類と定義

確認申請とは、一定の規模以上の建築物を建設または改修をしようとするとき、その計画が建築基準関係規定に適合しているかどうかを、着工前に建築主事(地方公共団体の有資格者)または民間の指定確認検査機関に申請を提出して、建築確認済証の交付を受けるために必要な申請です。

確認申請の申請は「建築主」が行わなければなりませんが、一般的な建築工事では設計者もしくは施工業者などが代理人になって申請を行っています。

1-1.建築基準法による確認申請が必要な建築工事の種類

確認申請は、建築工事なら何でもかんでも申請が必要という訳ではなく、建築基準法の第六条「建築物の建築等に関する申請及び確認」の中で確認申請が必要な建築工事の種類が定義されています。

建築基準法6条1項で定められている確認申請が必要な建築物として、以下の1号建築物から4号建築物の4種類に分類されています。

建築基準法第6条の第一号から第4号

・1号建築物
特殊建築物でその用途に供する床面積の合計が100㎡を超えるもの

・2号建築物
木造の建築物で3階以上、または延べ面積が500㎡、高さ13mもしくは軒の高さ9mを超えるもの

・3号建築物
木造以外の建築物で2階以上、または延べ面積が200㎡を超えるもの

・4号建築物
第1号~第3号以外の建築物のほか、都市計画区域もしくは景観法などで指定された区域内の建築物

建築基準法では、上記の1号~4号すべての建物を新たに建設するときは、事前に確認申請を提出する必要があると定めています。ただし、4号建築物に関しては構造計算が不要(4号特例)になるため、1号~3号建築物よりも提出物が簡略化できます。

そこで、もちろん大規模修繕も建築基準法の中で規定されており、上記の1号~3号建築物に対して「大規模の修繕・模様替」を行うときに確認申請の提出が義務付けられています。

1-2.4号建築物の大規模修繕は確認申請が必要なのか?

建築基準法の中で確認申請が必要な大規模修繕工事として『1号~3号建築物の大規模の修繕・模様替』を行うときに確認申請の提出が義務付けられていますが「4号建築物は必要ないのか?」と疑問がある方もいるのではないでしょうか?

その答えは、4号建築物に対して実施する大規模修繕に関しては、確認申請の提出は不要になります。

まず、4号建築物は1号~3号以外の建築物となっていますが、単純に1号~3号建築物の規模以下の建物が4号建築物になります。 4号建築物になる条件

・100㎡以下の特殊建築物でその用途に供する建物
・木造2階建て以下、かつ延べ床面積500㎡以下、かつ高さ13m以下、かつ軒の高さ9m以下
・木造以外で平屋建て以下、かつ延べ床面積200㎡以下

簡単に言えば、一般的な2階建ての木造住宅は4号建築物に該当します。
建築基準法で定められている通り「1号~3号建築物に対しての大規模の修繕・模様替」で確認申請が必要になるのであって、4号建築物の大規模修繕は確認申請が不要です。

1-3.大規模修繕の確認申請が必要な定義と条件

大規模修繕で確認申請が必要になる定義は、上記で説明している通り「1号~3号建築物の大規模の修繕・模様替」となっていますが、その大規模の修繕・模様替について、さらに建築基準法の中で以下のように定義されています。

建築基準法の大規模の修繕・模様替の定義

・大規模の修繕
建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。

・大規模の模様替
建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。

このように建築基準法に定義されていますが、建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替がポイントになります。

1-3-1. 大規模修繕の「大規模」・「主要構造部」・「過半」・「修繕」・「模様替」とは?

「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替」が「大規模の修繕・模様替」と説明しましたが「大規模・主要構造部・過半・修繕・模様替とは何か?」と、明確に理解していない方もいるかと思いますので、ここからは言葉の定義について簡単にご紹介いたします。

「大規模」とは?
大規模はここまで説明した通り、建築基準法の中では「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕・模様替」と定められています。具体的には、マンションの主要構造部の1種以上に対して行う過半の修繕・模様替が「大規模の修繕または模様替」になります。

「主要構造部」とは?
主要構造部は、建物で重要な『壁・柱・床・はり・屋根又は階段』
を指し、そのほかの構造上問題のない間仕切り壁や間柱・付け柱・最下階の床・小梁・庇・屋外階段といった部分は除かれます。

「過半」とは?
過半とは、文字通り「半分以上」のことです。 例えば、柱が10本あるマンションで6本以上に対して補修工事を実施すれば、過半の修繕・模様替になります。

「修繕」とは?
修繕とは、同じ材料を使って元の状態に戻して建築当初の価値を回復する工事を指し、既存のものと概ね同じ位置および同じ材料・形状・寸法のものを使って原状回復を図ることをいいます。

「模様替」とは?
模様替とは、工事前の材料とは違う材料や仕様に変えて、建築当初の価値の低下を防ぐことを指し、建物の構造・規模・機能が変わらない範囲で改良することをいいます。

以上、大規模修繕で確認申請が必要な定義を詳しく説明しましたが、大規模修繕で確認申請が必要な条件は『建物の主要構造物(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)の1種類以上の過半(半分以上)に対して行う修繕(原状回復)もしくは模様替(改良)』ということになります。

1-4.確認申請の必要書類(構造計算書など)や手数料

提出する建築主事(地方公共団体の有資格者)または指定確認検査機関で申請書類が異なる場合があるので、事前に確認は必要。ここでは一般的に必要な書類をご紹介いたします。

建築基準法で定められている書類

・確認申請書
・委任状
・建築計画概要書
・建築工事届
・設計図書(意匠図、設備図、構造図)
・構造計算書(地盤調査報告書含む)
・安全証明書

この他にも提出する審査機関で必要な書類があるので、申請を予定している審査機関で確認するようにして下さい。

確認申請の手数料

確認申請に対して法律では手数料の上限は決まっていますが、提出する審査機関で違いがあります。 東京都を例にご紹すると以下の手数料が必要になります。

東京都の確認申請の審査手数料

・30m2超え100m2以内:9,400円
・100m2超え200m2以内:14,000円
・200m2超え500m2以内:19,000円

手数料に関しても提出する審査機関で異なるので、事前に確認するようにして下さい。

1-5.確認申請における既存不適格と大規模修繕の扱い

既存不適格建築物というものはご存知でしょうか?

既存不適格とは新しく制定・改正された規定に適合しない状態を指し、既存不適格になる建築物を「既存不適格建築物」といいます。

例えば、2000年に建設されたマンションは当然2000年時点の規定で建てられています。
しかし、建築基準法は毎年少しずつ規定が改正されており、2010年にもなれば改正された規定に沿っていないのは当然です。

このような状態の建物が「既存不適格建築物」になりますが、現在の法律では「新法の遡及が免除」されるようになっています。
遡及(そきゅう)とは、法律をその施行以前になされた行為や生じた事実にさかのぼって適用することをいいます。

簡単に解釈すれば、新しい規制や規程ができても、それ以前に建てられた建物は適合していなくても問題ないということです。

大規模修繕は、劣化部分の修繕および模様替を主に行っていく工事なので、既存不適格のマンションでも新法の遡及が免除されます。つまり、まったく気にする必要がないということです。

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2.マンション大規模修繕に確認申請は必要なのか?

マンション大規模修繕に確認申請は必要なのか

確認申請について詳しくご説明しましたが、本題のマンション大規模修繕で確認申請の提出が必要なのか? ここまでの説明で何となく理解されている方もいるかと思いますが、確認申請の提出の有無についてご紹介します。

2-1.マンション大規模修繕の一般的な工事範囲

多くの分譲マンションの大規模修繕工事で行われている一般的な工事範囲は以下の通りになります。

大規模修繕の一般的な工事範囲

・外壁:下地補修工事、タイル補修工事、塗装工事
・屋上:防水工事
・開放廊下、階段、バルコニー:防水工事
・鉄部:塗装工事
・設備:給水、排水管の補修

このような居住者が快適に住み続けられる環境を確保するために行われる、資産価値を維持するために行う修繕工事や建物および設備の性能や機能の向上を図るために行う改修工事が一般的なマンション大規模修繕になります。

2-2.主要構造物の過半の修繕・模様替が無ければ確認申請は不要

そこで、確認申請が必要か?という問題ですが、上記のような一般的なマンション大規模修繕であれば確認申請の提出は必要ありません

大規模な修繕および模様替で確認申請が必要な条件は、“建物の主要構造物(壁、柱、床、はり、屋根又は階段)の1種類以上の過半(半分以上)に対して行う修繕(原状回復)もしくは模様替(改良)”です。

マンションで行う大規模修繕は、いわゆる建物表面上の劣化した部分の補修および改修を行う工事です。建築基準法で定める「大規模な修繕・模様替」とはニュアンスが異なります。

つまり、劣化の補修および改修を同時期に行うので大規模修繕と呼ばれているだけで、建築基準法で定める「大規模な修繕・模様替」とは考え方が違います。

このような理由から、一般的なマンション大規模修繕工事では確認申請を提出する不要なのです。

2-3.マンション大規模修繕工事で確認申請が必要なケースとは?

大規模修繕で確認申請が必要な条件は「建物の主要構造物(壁・柱・床・はり・屋根又は階段)の1種類以上の過半(半分以上)に対して行う修繕(原状回復)もしくは模様替(改良)」であり、ほとんどのマンション大規模修繕では確認申請の提出は不要です。

しかし、マンション大規模修繕の工事範囲に以下の工事が含まれるときは、確認申請の提出が必要になる可能性があります。

マンション大規模修繕で確認申請の提出が求められる工事

・エレベーターのリニューアル工事
・耐震対策工事

以上の、エレベーターのリニューアル工事と耐震対策工事を実施する場合、確認申請が必要になる可能性があります。

まず、エレベーターのリニューアル工事では「全撤去型リニューアル方式」と「準撤去型リニューアル方式」でリニューアル工事を行うときに確認申請の提出が必要になります。次に、耐震対策工事を行うマンションでは、柱や梁などの主要構造部に対して、過半(半分以上)の補強工事を実施するときに確認申請の提出が求められます。

詳しくは「大規模修繕の定義とは?建築基準法の定義など簡単解説」こちらで解説しているので、定義を含めて気になる方は合わせてご覧ください。

3.まとめ

建設工事の確認申請についてご紹介してきましたが、何となくはご理解できたでしょうか。

大規模な修繕・模様替で提出が必要な条件は「建築物の主要構造部の一種類以上について行う過半の修繕・模様替」となっているので、一般的なマンション大規模修繕では基本的に確認申請を提出する必要はありません。

基本的に確認申請は、設計事務所や施工会社が提出を行うので、管理組合の方はあまり気にすることはありません。
しかし、主要構造部の柱や壁の半分以上に対して構造上問題がある工事をするときは、確認申請の提出の有無だけは確認しておくと安心です。

また今後、確認申請を経て大規模修繕工事を行う場合に注意すべきポイントをまとめました。気になる方は「まずは確認!大規模修繕の代表的な4つの危険ポイント」 こちらを参照ください。

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