マンション大規模修繕のコンサルタントとしての「設計事務所」の役割とは?

コンサルタントとしての「設計事務所」の役割とは?

コンサルタントとしての「設計事務所」の役割とは?

大規模修繕では「設計監理方式」と呼ばれる発注方式を、多くのマンションが採用しています。
そして、設計監理を依頼するコンサルタントとして、一般的に選定されているのが「設計事務所」です。

正確には「建築設計事務所」を指し、コンサルタントとして依頼すれば大規模修繕の準備から完成まで、マンション側の良きパートナーとして、的確なサポートが得られるようになります。

しかし「そもそも設計事務所とはどんな会社なのか?」と、設計事務所が元々どんな仕事をしているのか、分からない方もいるのではないでしょうか?

そこでこの記事では、設計事務所とは?について業務内容など簡単に説明したあと、大規模修繕のコンサルタントとしての設計事務所の役割や、選定するときのポイントをお話していきます。

このページの目次

1. マンション大規模修繕と設計事務所の関係性とは?

マンション大規模修繕と設計事務所の関係性とは?

マンション大規模修繕は、月日の経過に伴って発生した建物の劣化や損傷を修繕して、耐久性や美観を回復するために行われる工事になります。一般的に「12年周期」で実施される、マンション最大のイベントです。

そのマンション大規模修繕の実施にあたっては、準備段階から完成まで、ある程度の建築的な専門知識が求められるため、コンサルタントとして設計監理を依頼するのが「設計事務所」になります。

1-1. そもそも「設計事務所」とは?

設計事務所は正式に「建築設計事務所」を指し、名前の通り「設計」を主業務として営業している職場・事務所の総称です。
設計事務所には「意匠」「構造」「設備」という3種類の分野があり、それぞれ専門に設計活動をしている事務所があるなど、営業形態は職場・事務所によって異なります。

設計事務所の主な仕事はもちろん「設計」ですが、設計業務に携わるためには「建築士」の資格が必要になるとともに、設計できる規模や構造などによって以下の3種類に分かれます。

建築士の種類

・一級建築士
・二級建築士
・木造建築士

次に設計事務所の業務内容について、設計事務所には「意匠」「構造」「設備」という3種類の分野がありますが、いずれの分野でも基本的に以下の業務を行います。

設計事務所の業務内容

・調査・企画提案(建物調査・企画提案の作成)
・建築設計(基本設計・実施設計・建築確認申請業務)
・工事監理(施工業者選定・工事・工程管理・各種検査の立会い)

このように、業務内容は依頼する設計事務所によって多少異なりますが、マンションなど施工者のパートナーとして、建物の調査から設計・工事監理まで、様々なサポート業務を行っています。

1-2. 大規模修繕のコンサルタントといえば「設計事務所」

マンション大規模修繕には、大きく「責任施工方式」と「設計監理方式」という2種類の発注方式があります。
「責任施工方式」は、特定の施工業者に建物診断から設計図・仕様書の作成・施工管理まで、大規模修繕の始まりから終わりまですべて施工業者に一任する方式です。

責任施工方式はコンサルタント費用が必要なく、すべて施工業者に一任するので、マンション側の負担は軽減できますが、工事費用が不明瞭になりやすく、さらに工事品質の面で第三者によるチェックが入らず、手抜きや欠陥工事のリスクが高まる可能性があります。

そのため大規模修繕工事を実施するマンションの多くは、施工と設計監理を分離して契約する「設計監理方式」を採用しています。
その設計監理方式において、設計監理を依頼するコンサルタントとして、一般的に選定されるのが「設計事務所」です。

ほかに、コンサルタント専門会社や日常の維持管理を依頼している管理会社に、コンサルタントを依頼するケースもありますが、大規模修繕のコンサルタントとして、会社の数が多く、選択肢の幅も広いことから、一般的に選定されるのが設計事務所になります。

設計事務所にコンサルタントを依頼すれば、大規模修繕の計画から施工業者の選定・品質管理まで、的確なサポートが得られるようになるほか、工事の必要性の有無も判断してくれるので、結果として工事費用の削減にも繋がっていくのです。

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2. マンション大規模修繕での「設計事務所」の役割と選び方

マンション大規模修繕での「設計事務所」の役割と選び方

マンション大規模修繕工事の実施に伴って、設計監理を「設計事務所」に依頼したとき「どんな役割を果たしてくれるのか?」また「設計事務所をどのように選べばいいのか?」という2つの疑問が浮かんできます。

そこでこの項では、マンション大規模修繕での設計事務所の役割と、選定するときのポイントを説明していきます。

2-1. マンション大規模修繕のコンサルタントとしての設計事務所の主な役割

マンション大規模修繕に伴って、コンサルタントとして設計事務所を選定したときの役割について、ここまでの話しの中でいくつか出ていますが、ここでは一般的な主な役割をご紹介します。

2-1-1. 建物調査の実施

設計事務所にコンサルタントを依頼したとき、最初に行うのが建物の調査です。

設計事務所が、マンションの長期修繕計画や新築時の完成図(竣工図)および仕様書・修繕履歴などの事前調査を行うとともに、建物劣化診断を専門の調査機関に依頼します。その調査に合わせて、マンション居住者を対象にしたアンケート調査も実施します。

そして、建物劣化診断およびアンケート調査の結果を、設計事務所が精査して予算計画などを立案していきます。

2-1-2. 設計図面および仕様書の作成

上記の調査業務で、マンションの劣化・損傷個所を把握したら、その結果をもとに、主業務である大規模修繕工事の設計図および仕様書を作成します。

設計図・仕様書の作成にあたっては、マンションの修繕積立金の残金を把握したうえで、工事の必要性や優先順位を決めて、先送りできる工事がないかの見極めを行い、できる限り工事費が抑えられるように検討していきます。

2-1-3. 施工業者の選定

マンション大規模修繕にあたって、設計事務所の大きな役割の一つが、施工業者の選定業務です。
施工業者の選定に伴って、工事品質などの技術的な面はもちろん、安全や防犯など居住者への配慮ができる、施工業者の選定が重要になります。

施工業者の選定にあたっては「一般公募」が広く採用されていますが、一般的に以下のような流れで施工業者を選定していきます。

大規模修繕工事に伴う施工業者選定の流れ

➀一般公募で施工業者を広く募集する
➁見積もり参加業者の決定
➂現地説明会および見積もり依頼
➃見積書の徴収から見積もり内容の比較検討
➄施工業者とのヒアリングおよびプレゼンテーションの実施
➅施工業者へ内定通知書の送付

このような流れで施工業者の選定を行いますが、設計事務所が公募から施工業者とのヒアリングまですべてサポートします。

2-1-4. 工事監理業務

大規模修繕工事が着工したら、設計事務所は第三者の目線で、設計図や仕様書通りに施工が行われているか監理を行います。

設計事務所ごとに、独自の監理チェックシートを作成したうえで確認を行い、品質上で何か問題があれば、施工業者に指摘して修正してもらいます。また大規模修繕期間中、段階別に検査を実施して出来高のチェックも行います。

設計事務所はコンサルタントとして主に以上の役割を果たしますが、ほかに長期修繕計画を正しく作成しているかチェックするとともに、見直し業務もサポートしてくれます。

2-2. コンサルタントとして「設計事務所」を選ぶときのポイントと費用相場

ここまで、大規模修繕のコンサルタントとしての設計事務所の役割を説明しましたが「実際にどのように設計事務所を選べば良いのか?」について、大きく以下の2つのポイントが挙げられます。

コンサルタントとして設計事務所を選ぶときのポイント

・大規模修繕コンサルタントとしての実績(リピート案件の有無)
・マンション運営の知識

設計事務所を選ぶときの一番のポイントは、大規模修繕におけるコンサルタント実績です。
何事においても同じですが、経験や実績が豊富であれば豊富であるほど、安心感が得られるのはもちろん、現実に実績が豊富な設計事務所の方が信頼できます。

そのほか、リピート案件の有無もチェックします。リピート案件があるということは、それだけ信頼されているという証になるので、選定するうえで重要な判断材料になります。

また、マンション大規模修繕のコンサルタントを依頼するうえで、マンション運営の知識を有しているか?も重要なポイントです。マンション運営の知識を有していれば、マンション側の意向を施工業者に的確に伝えられるようになります。

選定基準が少し漠然としていますが、特に過去のコンサルタント実績はしっかり確認しましょう。

2-2-1. 設計事務所にコンサルタントを依頼したときの費用相場

次に設計事務所に大規模修繕のコンサルタントを依頼したときの費用について、一般的に、以下が費用相場と言いわれていますが、設計事務所に依頼したときに限った相場ではなく、コンサルタント全般の費用相場になります。

設計事務所などコンサルタントを依頼するときの費用相場

・一戸当たり2万円~3万円
・工事費全体の5%~10%

あくまで目安ですが、単純な例で100戸のマンションなら、コンサルタント料は200万円~300万円・工事費用が3千万円なら150万円~300万円が相場になります。

依頼するにあたっては当然見積もりを依頼するので、複数の設計事務所に見積もりを依頼したうえで、料金面だけでなくサービス面も含めてしっかり比較検討したうえで、当該マンションに最適な設計事務所を選定するようにしましょう。

3. まとめ

マンション大規模修繕の発注方式として広く「設計監理方式」が採用されていますが、一般的に設計監理を依頼するのが「設計事務所」になります。

設計事務所にコンサルタントを依頼すれば、大規模修繕の計画から施工業者の選定・品質管理まで、的確なサポートが得られるようになるほか、工事費が削減できるようなサポートも行ってくれます。

その設計事務所の選定にあたっては、過去のコンサルタント実績を考慮したうえで、複数の設計事務所を比較検討して、マンションの意向をしっかり理解してくれる設計事務所を選ぶようにしましょう。

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