「修繕積立金」滞納トラブル!予算不足を招くことも!
【元大規模修繕業界担当者が教える知って得する豆知識-Column.10】
マンションではおおよそ12年周期で大規模修繕が実施されますが、その工事費用は「修繕積立金」で賄われます。
修繕積立金とは、マンションで行う修繕工事で必要になる費用を賄うために、毎月居住者から徴収して積み立てるお金です。
また、マンションでは「管理費」というお金も毎月納めてもらいますが、問題になっているのが「滞納」です。
修繕積立金は建物に生じた損傷を補修する費用として使われるほか、大規模修繕に必要な大事なものなので、滞納者が増えれば予算が足りないなどのトラブルを招く危険があります。
ここからは、マンションの修繕積立金の積立方式や積立状況の説明と、滞納者に対して管理組合が取るべき対策をご説明します。
このページの目次
1. 修繕積立金の積立方式と積立状況
2. 修繕積立金の滞納者に対して管理組合が取るべき対策
3. まとめ
1.修繕積立金の積立方式と積立状況
マンションの修繕積立金は、居住者の快適な生活や資産価値の維持・向上のために、定期的な修繕とともに一般的に12年周期で実施される大規模修繕の工事費用として使われるお金です。
特に大規模修繕の工事費は「一戸あたり75~100万円」が目安になり、戸数が多いマンションでは膨大な工事費用が必要になります。そこで、マンション内で修繕積立金の滞納者が増えてくれば、大規模修繕を実施するときに不足する可能性が高くになります。
通常、マンションの修繕積立金は以下の2種類の積立方式のどちらかが採用されています。
マンションの修繕積立金の積立方式
・均等積立方式:修繕積立金を一定期間、均等に積み立てる方式
・段階増額積立方式:3年・5年・10年などの一定期間ごとに段階的に増額していく方式
一般的なマンションは「均等積立方式」を採用していますが、段階増額積立方式を採用しているマンションでは、段階的な増額について居住者との合意形成が難しく「滞納」というトラブルが発生しています。
もちろん、「均等積立方式」を採用しているマンションでも居住者の経済事情で滞納が発生するケースも多々あります。
1-1.修繕積立金が積立状況(計画上の積立額と実際の積立額の差)
ここで参考までに、滞納などが原因で修繕積立金が不足しているかを表す積立状況をご紹介しておきます。
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果(平成31年4月26日公表)」の調査結果からご紹介します。
添付資料の「平成 30 年度マンション総合調査結果からみたマンション居住と管理の現状(http://www.mlit.go.jp/common/001287570.pdf)」の中で「修繕積立金の積立状況」の調査も行われています。
その調査結果を見ると、修繕積立金の積立額と現在の修繕積立金の積立額の差は、「現在の積立額が計画に比べて不足している」と回答したマンションが34.8%という高い割合になっています。
さらに、その中で不測の割合が「計画に対して20%超足りない」と回答したマンションが15.5%に及んでいるのです。
以上のように、修繕積立金の不足に困っているマンションが多いことから、管理組合は修繕積立金の滞納者に対して何らかの対策を講じる必要があります。詳しくは事項にて。
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2.修繕積立金の滞納者に対して管理組合が取るべき対策
修繕積立金の滞納者が増えることで大規模修繕の工事費が不足するトラブルが発生してしまいます。その予算不足を解消するために、大規模修繕の工事範囲を狭めるなどの対策が必要になってきます。
工事範囲を狭めると劣化や損傷が修繕できないエリアが発生してしまい、マンションの美観が損なわれることになります。
その結果、資産価値の低下を招く危険があるのです。
このような事態を回避するためにも、マンションの管理組合は段階を踏んで、最終的に法的措置まで視野を入れた慎重な対応が求められます。ここで参考に、一般的な滞納者への催促手順をご紹介します。
修繕積立金の滞納者への催促・督促手順
➀ 納入締切日から10日:電話(口頭)での催促
➁ 納入締切日から40日:支払いを求める文書による催促
➂ 納入締切日から60日前後:滞納者宅に訪問して直接催促
➃ 納入締切日から90日:内容証明郵便による督促(弁護士に相談)
➄ 納入締切日から120~150日:エレベーターなどの共用施設の使用禁止措置
➅ 納入締切日から180日前後:弁護士を通して法的措置の実施
基本はこの流れで滞納者に対して支払いの催促を行っていきますが、丁寧に話し合いながら慎重に進めることが大切です。
支払うことができない事情を持っている方もいるので、何でもそうですが無理強いしては返って反感をかう結果になります。
ただし、中には「払えるのに払わない」という人もいるので、そういった滞納者に対しては手続きを踏んで公平で毅然とした態度で臨む必要があります。滞納者宅を訪問して直接支払いの催促をしても3ヶ月以上滞納が続くときは、弁護士に相談として内容証明を出してもらい、180日の半年以上滞納が続くときは弁護士を通して法的措置を講じましょう。
大規模修繕工事は居住者の快適な生活や資産価値の維持・向上のために実施されるものなので、滞納者に対してはその旨をしっかり説明することも重要です。
3.まとめ
マンションの修繕積立金は、建物の定期的な修繕とともに一般的に12年周期で実施される大規模修繕の工事費用として使われるお金です。
その修繕積立金が不足するマンションは増加傾向であり、その原因の一端が「滞納」です。
修繕積立金が不足すれば大規模修繕の工事範囲を狭めるなどの対策が必要になり、結果としてマンションの資産価値の低下を招く危険があります。
そこで、管理組合は滞納者に対して手続きを踏んで公平で毅然とした態度で臨みつつ、滞納がなくなるようなシステム作りが重要になります。