管理費・修繕積立金・共益費の違いと費用不足のワケ
【元大規模修繕担当者が最新ニュースを独自の見解で分析!-NO.10】
2019/7/17(水) の幻冬舎GOLD ONLINEの記事の中に「マンション投資のコスト「管理費」…払う価値はあるのか?」という記事を見かけました。
その内容は、マンション購入者が毎月支払う「管理費」や「修繕積立金」(賃貸は「共益費」)が何のための費用なのか正確に把握している不動産オーナーが少ないというもので、大規模修繕の予算不足に直結するような内容でしたので、皆さまにも有益な情報として共有いたします。
分譲マンションを購入すれば区分所有者になり、毎月「管理費」と「修繕積立金」の支払い義務が発生し、賃貸マンションでは毎月「共益費」として支払います。
そこでこの記事では、「管理費」や「修繕積立金」、「共益費」の違いの説明と、分譲マンションで問題になっている管理費と修繕積立金の不足の原因をご紹介します。これからマンションを購入もしくは借りるという方は今後必要になるお金なので、参考のために是非ご覧ください。
このページの目次
1.マンションの「管理費」「修繕積立金」「共益費」は何に使われる費用なのか?
先程も簡単に説明した通り、分譲マンションは購入すれば区分所有者となり、毎月「管理費」と「修繕積立金」の支払いが求められます。それが賃貸マンションでは「共益費」という名目で支払う形になります。
そこで、「管理費」や「修繕積立金」、「共益費」が何に使われるお金なのかしっかり把握しているでしょうか?
幻冬舎GOLD ONLINEの記事では何のための費用なのか、どのように使われるのか正確に把握していない不動産オーナーが多いと紹介されています。
まず、管理費などが何に使われるお金なのか説明しておくと「建物の保守や維持管理に使われる費用」になります。
といっても分からない方もいると思いますので、それぞれどんなことに使われるお金なのかお話していきます。
1-1.「管理費」とは?
管理費とは分譲マンションの日常的な保守や維持管理に使われる費用です。
管理費は基本的にマンション「共用部分」の保守や維持管理のために使われますが、主に以下のような用途に管理費は使われます。
マンション管理費の主な用途
・管理会社の管理委託費
・管理組合の運営費
・共用部分の水道光熱費
・火災保険などの損害保険料
・突発的な建物への損傷の補修
この中で管理費全体の約6~7割は管理会社に支払う「管理委託費」に充てられ、主に管理員、エレベーターなどの保守維持・運転、清掃、ごみ処理などの業務の費用として使われます。
1-2.「修繕積立金」とは?
修繕積立金は分譲マンション特有の費用です。
居住者の快適な生活や建物の資産価値の向上を図るために、定期的な修繕工事とともに一般的に「12~15年周期」で計画される大規模修繕工事の費用として積み立てられる費用です。この修繕積立金はマンション管理組合が作成する長期修繕計画の中で積立額が決められます。
マンションなどの建物は日常的に保守・維持管理をしていたとしても10年を超えれば経年劣化は避けられないため、12年~15年の周期で大規模な修繕が必要になるのです。
分譲マンションの修繕積立金は大きく以下の2種類の積立方式が採用されますが、一般的なマンションは「均等積立方式」を採用しています。
修繕積立金の積立方式
・均等積立方式:一定期間(12年~15年)修繕積立金を均等に積み立てる方式
・段階増額積立方式:3年・5年・10年など一定期間ごとに段階的に増額して積み立てる方式
1-3.「共益費」とは?
共益費は賃貸マンションなどの集合住宅で家賃とは別に支払う費用になります。
「管理費」と呼んでいる賃貸マンションは多いですが、「共益費=管理費」と考えておきましょう。
共益費は分譲マンションの管理費と同じように、マンション共用部分の保守・維持管理に使われる費用で主に以下の用途に使われます。
共益費の主な用途
・共用部分の清掃および突発的な損傷の復旧
・共用部分の水道光熱費
・エレベーターなどの共用設備の保守点検
・共用花壇の手入れや害虫駆除
また、賃貸マンションではマンションオーナーの義務として12年~15年周期で大規模修繕工事を行う必要があるため、共益費とは別に大規模修繕を見据えた資金計画を立てておくことが重要になります。
ここまで管理費、修繕積立金、共益費について簡単に説明しましたが違いは分かったでしょうか。
そこで、幻冬舎GOLD ONLINEの記事の中でも触れられていますが、分譲マンションで必要になる「管理費」と「修繕積立金」が不足する問題を抱えているマンションが多いのです。なぜ不足するのか?については事項にて。
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2.大規模修繕で必要な修繕積立金が不足するワケ
そもそも「管理費」は建物の劣化を防ぐための保守・維持管理に使われる費用で、管理会社の管理委託費を基準に金額が設定されています。修繕積立金も長期修繕計画の中で工事に必要な費用を逆算して毎月計画通りに積み立てているはずです。
それが、「なぜ管理費や修繕積立金が不足するのか?」と、疑問がある方は多いと思います。 その一番の原因は、マンション分譲時に販売促進のために意図して管理費と修繕積立金を適正額よりも低く設定していることです。
入居者が増えてきたら増額すればいいと安易な考えで行われているようですが、増額に伴う居住者との合意形成が難しいことから、結局そのまま据え置かれるケースが多いのです。
管理費は適正額よりも金額が低く設定していれば管理委託費を抑える必要があるため、管理員の勤務形態や保守・維持管理業務がずさんになってしまう可能性があります。修繕積立金に関しても適切額よりも低く設定していれば、大規模修繕工事のときに不足するのは当然です。
その結果、マンション自体の資産価値が低下してしまい入居者の減少を招く危険があるのです。 分譲マンションでは区分所有者が売却するときも安く売らなければならないなどの問題まで発生してしまうでしょう。
そこで、日々の管理業務に問題があると感じたときは、マンション管理組合の役員や管理会社に問い合せて改善を促すように働きかけましょう。
3.まとめ
幻冬舎GOLD ONLINEの記事では、「管理費」や「修繕積立金」、「共益費」が何のための費用なのか正確に把握している不動産オーナーが少ないというものでしたが、違いは理解できたでしょうか?
管理費と共益費は、日常の保守・維持管理に必要な費用で、修繕積立金は分譲マンションで行われる大規模修繕工事などで使われる費用です。
現在、多くの分譲マンションで問題になっているのが管理費や修繕積立金の不足ですが、本文の最後に説明した通り問題があると感じたときは積極的に改善を促すよう働きかけましょう。