修繕積立金の値上げの原因と値上げを防ぐ方法
【元大規模修繕業界担当者が教える知って得する豆知識-Column.37】
普通のマンションは「修繕積立金」を毎月積み立てています。
「修繕積立金」とは、マンションの快適な生活や資産価値の維持・向上のための定期的な修繕とともに、12年~15年周期で実施される大規模修繕の工事費用を賄うためのお金になります。
そこで、その修繕積立金が値上がりすることがあるのはご存知でしょうか?
しかし、「なぜ値上がりするのか?」と疑問に感じている方もいるでしょう。
修繕積立金はマンションの長期修繕計画の中で、大規模修繕の計画に合わせて金額が算出されますが、積立方式や当初の設定が間違っていると値上げが行われることがあるのです。
ということで今回は、マンションの修繕積立金について、積立方式の説明と修繕積立金が値上がりする原因と値上げを防ぐ方法などご紹介します。
このページの目次
1. 修繕積立金とは?積立方式は2種類
2. 修繕積立金が値上がりする理由と値上げを防ぐ方法
3. まとめ
1.修繕積立金とは?積立方式は2種類
修繕積立金とは、建物に生じる損傷などの定期的な修繕と、一般的に12年周期で実施される大規模修繕の工事費を賄うためのお金です。
一般的なマンションは長期修繕計画の中で定期的な修繕と大規模修繕の計画を立案するとともに、修繕工事で必要になる費用を想定して月々積み立てる「修繕積立金」の額を設定しています。
このように、修繕積立金はマンションの修繕工事に使われるお金ですが、大きく「均等積立方式」、「段階増額積立方式」という2種類の積立方式があり、この積立方式に沿って居住者は毎月修繕積立金を支払います。
先に言っておくと、一般的なマンションは「均等積立方式」が採用されています。
それでは、それぞれどんな積立方式なのか簡単にご紹介します。
1-1.「均等積立方式」一定期間均等に積み立てる方式
均等積立方式は、12年周期で大規模修繕を計画しているマンションの場合で例えると、12年の間に修繕積立金を均等に積み立てる方式になります。単純に修繕積立金が10,000円なら、12年間ずっと10,000円ということです。
基本的に毎月定額になるので、修繕積立金を安定して積み立てられることができます。居住者も毎月決まった金額を支払うようになるので、滞納する家庭が少なくなるのもメリットの一つです。
1-2.「段階増額積立方式」段階的に増額していく方式
段階増額積立方式は、分譲当初は修繕積立金を安く設定して、3年・5年・7年など一定期間ごとに段階的に積立額を増額していく方式です。こちらも単純に分譲当初が10,000円なら、3年後20,000円、5年後30,000円というように段階的に増額されていきます。
入居したあと何年かは負担が少ないメリットはありますが、長く住み続けると段階的に積立金が増額されるので、最終的に上で紹介して均等積立方式よりも負担が大きくなる特徴があります。
このように段階的に積立金を増額するため、増額に伴う居住者との合意形成が難しく滞納や未払いなどのトラブルが発生し、大規模修繕のとき不足するケースが多いと言われています。
以上、2種類の修繕積立金の積立方式はありますが、特徴を見れば分かる通り、一般的なマンションでは「均等積立方式」が採用されています。
大規模修繕支援センターって何をやってるところ?
- 優良コンサルタントや施工会社を無料紹介している
- 専門相談員による無料相談ができる
- 大規模修繕工事についての情報を集約している
大規模修繕支援センターで大規模修繕のことに関してお気軽に相談することが可能
2.修繕積立金が値上がりする理由と値上げを防ぐ方法
マンションで積み立てる修繕積立金の金額は、長期修繕計画の中で決められます。
長期修繕計画は、マンション居住者で組織される管理組合によって作成される長期的な修繕計画を指します。
一般的に10~30年程度の期間を想定して、経年劣化や損傷などの修繕をどの時期にどの程度の費用で実施するのかを計画するために作成され、おおむね5年ごとに見直しが行われます。
そこで、見直しに伴って数年後に実施する大規模修繕の予算が不足すると予想されたときに値上げが行われることがあるのです。
そもそも最初に長期修繕計画を立てるとき、定期的な修繕費用と大規模修繕の工事費用を想定して修繕積立金が算出されているはずなのに、何で値上げが必要になる事態になるのか疑問に感じる方は少なくないでしょう。
2-1.修繕積立金が値上がりする理由とは?
先程ご紹介した2種類の積立方式で、段階増額積立法式は3年・5年・7年と一定期間ごとに段階的に増額する方式なので、値上がりするのは当然です。しかし、均等積立方式で修繕積立金が値上げされたら、納得しない方は多いのではないでしょうか。
「なぜ均等積立方式で値上げされるのか?」について、その大きな理由は最初の計画段階で修繕積立金を安く設定していたからです。
国土交通省が公開している「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を見ると、15階未満の延床面積5,000~10,000m2の一般的なマンションの修繕積立金の相場は202円/m2となっています。
そこで、例えば同規模のマンションで分譲当初に150円/m2や100円/m2で設定していれば、長期修繕計画の見直しのときに将来的に不足することが考えられます。そこで、実際に不足するという判断になれば、均等積立方式であっても修繕積立金が値上げされるのです。
2-2.修繕積立金の値上げを防ぐ方法
修繕積立金の値上げを防ぐ方法として、当たり前のことですが最初に適正額の修繕積立金を設定することにつきます。
しかし、それでも大規模修繕のとき修繕積立金が不足するトラブルが発生しています。
そこで、修繕積立金の不足を解消する有効な対策が、管理会社に支払う管理委託費の見直しです。
管理会社に日常の保守・管理業務を委託しているマンションは、管理委託費を管理会社に支払うようになります。
実はマンションの支出の中で管理委託費が大部分を占めています。
そのため、この管理委託費の見直しを行い削減できれば、大規模修繕に充当できるようになるので、結果的に修繕積立金の値上げを防ぐことができる可能性があるのです。
管理委託費の見直しについては「上手な管理会社活用法!管理委託費削減で大規模修繕の予算不足解消!(内部リンク)」で詳しく説明しているので、管理委託費でお困りの方は是非ご覧ください。
3.まとめ
マンションでは「修繕積立金」が定期的な修繕とともに12年~15年周期で実施される大規模修繕の費用をとして積み立てられます。2通りの積立方式はありますが、一般的なマンションでは「均等積立方式」が採用され、居住者は毎月決まった金額を納めるようになります。
そこで、長期修繕計画の当初の計画で修繕積立金を安く設定していると、大規模修繕の予算不足が想定され、修繕積立金が値上げされるケースがあるのです。
その値上げを防ぐ有効な対策が、管理会社へ支払う管理委託費の見直しです。管理委託費を見直して削減できれば、大規模修繕に回すことができるので、予算不足が解消できる可能性があります。
というような対策はありますが、まずは最初に適正額の修繕積立金を設定することが最も大事です。