バリューアップ工事とは?一緒に合わせて行いたい工事をご紹介
【元大規模修繕業界担当者が教える知って得する豆知識-Column.36】
マンションで実施される大規模修繕は、建物に生じた劣化や損傷を修繕して新築当時の状態に戻す目的で行われる工事です。
そこで、その大規模修繕にプラスして実施したいのが「バリューアップ工事」です。
バリューアップは日本語では「価値向上」を意味し、マンションの資産価値の向上を図り、賃貸物件なら収益性を高めるために行われる工事になります。
ここからは、マンションの大規模修繕工事と合わせて実施したいバリューアップ工事の種類やポイントをご紹介していきます。
このページの目次
1. 2回目以降の大規模修繕でバリューアップ工事を検討しよう!
2. マンションで実施したいバリューアップ工事の種類とポイント
3. まとめ
1.2回目以降の大規模修繕でバリューアップ工事を検討!
マンションで実施される「大規模修繕」は、月日の経過によって生じた劣化や損傷、不具合を修繕・補修して、新築当時の状態に戻すための工事になります。簡単にいえ原状回復工事です。
大規模修繕はマンションの長期修繕計画の中で計画されますが、一般的に12年~15年周期で実施されます。
事前に建物診断を行い、劣化状況を把握したうえで実際の工事範囲は明確になりますが工事内容は多岐に渡ります。
仮に12年周期で大規模修繕工事をマンションでは、1回目の大規模修繕は立地環境で違いはあるものの、それほど劣化が進行していない状態なので、建物表面上に発生した損傷や不具合の修繕で済むケースがほとんどです。
それが築24年目にあたる2回目以降の大規模修繕になれば、1回目の大規模修繕よりも劣化や損傷個所が広範囲におよぶとともに、設備関係の取替え時期にもなるので、大がかりな大規模修繕工事が必要になります。
1-1.2回目以降の大規模修繕で「バリューアップ工事」の検討を!
そこで、2回目以降の大規模修繕では、建物の修繕とともに住みやすさや美しさをプラスする「バリューアップ工事」が求められます。
バリューアップは先程も簡単に説明しましたが、日本語では「価値向上」を意味しています。
マンションでは、具体的な工事の種類は次の項で紹介しますが「資産価値を向上するための工事」ということになります。
2回目の築24年目になれば劣化が進むとともにその時代で求められる住環境の水準に見合っていないと考えられます。
そこで、大規模修繕による原状回復にプラスして、その時代の住居水準や生活水準に見合うように、マンション性能をグレードアップするバリューアップ工事を行うことで、より住みやすい環境にできるとともに資産価値の向上を図ることができるのです。
もちろんバリューアップ工事を行うためには、大規模修繕とは別の費用がかかります。
長期修繕計画の中で2回目以降の大規模修繕にはバリューアップ工事を視野に入れた予算計画や修繕計画を立てる必要があります。
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2.マンションで実施したいバリューアップ工事の種類とポイント
バリューアップ工事を検討するといっても、どんな工事を行えばいいのか?という問題があります。
ポイントは「マンション性能をグレードアップ」するということです。ということで、マンションで実施したいバリューアップ工事の種類とそれぞれのポイントをご紹介いたします。
2-1.「バリアフリー化」で高齢化対策!
少子高齢化となった現代において、マンションの居住者も高齢化しています。
全国のマンション居住者の中で60歳以上のシニア層が全体の約40%にもおよび、今後も増え続けることが考えらます。
そこで、マンションでも各部屋の専有部分はもちろんですが、特に共用部分のバリアフリー化が求められます。
高齢の居住者が安心して快適に生活できるようになることで、高齢者に優しいマンションとして認められれば、資産価値の向上が期待できるのです。
具体的にどのような工事を行えばいいのかは、それぞれのマンション環境やニースで異なりますが、一般的に以下のようなバリアフリー化工事が行われています。
マンションで行われるバリアフリー化工事の種類
- 手すり設置(外部・内部階段、廊下、エレベーター内など)
- 廊下などの床のノンスリップ化
- エレベーターのリフォーム
- エントランスの正面玄関に自動ドアの採用
- 公道と敷地の段差解消
- 玄関段差にスロープ新設
- 点字ブロックの設置
- 駐車場の整備(車寄せの新設など)
大規模修繕に合わせて以上のバリアフリー化工事を実施すれば、修繕積立金の不足が懸念されます。
そこで、全国の自治体ではマンションで行われるバリアフリー化を支援するための助成金や補助金制度を実施しています。
もちろん自治体によって制度の有無があるので、大規模修繕に合わせてバリアフリー化を検討するときは、お住まいの自治体の助成金・補助金制度を確認して、実施しているようなら応募することをおすすめします。
2-2.「災害対策」で災害に強いマンションに!
日本だけでなく世界規模で災害は常に発生しており、日本では「南海トラフ巨大地震」が現在最も懸念されています。
マンションでも災害対策工事を実施することで、災害に強いマンションとして認識されるようになります。
マンションで行う具体的な災害対策として、自家発電できる太陽光パネルを屋上に設置するなどの対策はありますが、やはり「耐震補強」は実施しておきたい工事の一つです。
1981年5月以前のマンションは「旧耐震基準」で建設されている可能性があるため、耐震診断を実施して耐震基準に満たないときは耐震補強を検討する必要があります。耐震診断の結果は「Is値(構造耐震指標)」で算出され、Is値が0.6未満のマンションは耐震補強を検討しなければなりません。
現在建設されているマンションは新耐震基準で建てられているので、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造になっています。とはいっても確実に安全という保障はないので、多くのマンションは柱の補強や耐震スリットを新設、外付けフレームの新設などの耐震補強工事を実施しています。
しかし、災害対策も大規模修繕と合わせて実施すれば予算不足が懸念されます。
そこで、バリアフリー化と同じように、全国の自治体ではマンションが実施する耐震診断や耐震設計、耐震補強に対して利用できる助成金・補助金制度が実施されているのです。
話はブリアフリー化と一緒で、まずはお住まいの自治体の助成金・補助金の有無を確認し、活用できるようなら応募してみましょう。
2-3.「セキュリティ対策」で安心生活を!
犯罪も日々巧妙化しているので、マンション共用部分のセキュリティ対策が求められます。
現在のマンションの多くはエントランスの玄関に「オートロック」を採用していますが、オートロックを採用していないマンションでは大規模修繕に合わせて導入の検討が求められます。
その他にも各部屋の玄関ドアの鍵を「シリンダー錠」に取り替えるほか、防犯カメラなどの監視システムの整備など、建物内部のセキュリティ対策も必要になってくるでしょう。
このようなセキュリティ対策には、上記で紹介した自治体の助成金・補助金制度がないので、予算に合わせてできる範囲のものを実施しましょう。
以上、主に実施されるバリューアップ工事を3種類ご紹介しのしたが、その他にも様々な工事が考えられます。
外壁やエントランスホールを一新して美観の向上を図るなど、バリューアップ工事といっても発想次第ではいくらでも挙げられます。
ただし、バリューアップのために大がかりな工事をすればその分工事費用も増えていくので、大規模修繕の予算も考慮しながら、出来る範囲のバリューアップ工事を検討していきましょう。
3.まとめ
マンションで行う大規模修繕は新築当時の状態に回復されるために行われますが、2回目以降の大規模修繕では「バリューアップ工事」も合わせて実施することが求められます。
大規模修繕にプラスして、現在の住居水準や生活水準に見合うように、マンション性能をグレードアップするバリューアップ工事を行うことで、より住みやすい環境にできるとともに資産価値の向上を期待できます。
バリューアップ工事の種類はさまざまですが、2回目以降の大規模修繕の予算を考慮してバリューアップ工事も検討していきましょう。