賃貸マンションの大規模修繕はオーナーの義務!実施する目的とは?

賃貸マンションの大規模修繕はオーナーの義務!

賃貸マンションの大規模修繕はオーナーの義務!

【元大規模修繕業界担当者が教える知って得する豆知識-Column.15】

マンションで実施される大規模修繕に関して、分譲マンションは居住者から納められる修繕積立金で賄われますが、賃貸マンションはオーナーの義務として行わなければなりません。

現在ではマンションオーナーになる方が増え、実際にマンション経営をしている方もいるのではないでしょうか。 マンションオーナーになれば家賃収入など安定した収入が得られるなどのメリットはあります。

しかし、建物の共用部分に関しては、定期的な修繕とともに大規模修繕を実施する必要があるのです。 大規模修繕の必要性は、建物の耐久性を延長することによる資産価値の維持・向上はもちろん、住環境の向上や劣化による事故防止などにあります。

そこで今回は、賃貸マンションのオーナーの方へ大規模修繕を実施する目的と工事費用の目安について解説いたします。

1. 賃貸マンションの大規模修繕はオーナーの義務!実施する目的を理解する

1. 賃貸マンションの大規模修繕はオーナーの義務!実施する目的を理解する

分譲マンションでは居住者が月々支払う「修繕積立金」で大規模修繕工事の工事費用を賄いますが、賃貸マンションは入居者の居室以外の共用部分の維持管理は、オーナーの義務として行わなければなりません。

各居室に関しては、入居者が退去するときに敷金で修繕およびメンテナンスを行いますが、それ以外のエントランスや共用廊下・階段などの共用部分に関しては、オーナーがその都度必要に応じて修繕するとともに、おおよそ12年周期で大規模修繕工事を実施する必要があります。

1-1.そもそも大規模修繕とは?12年周期の実施が一般的

まず賃貸マンションのオーナーが理解しておきたいのが、大規模修繕とは経年劣化によって発生する劣化や損傷・不具合の修繕を行って、建物の耐久性や機能性を回復するとともに、時代のニーズに応じてバリューアップを行い、資産価値の向上を図る目的で行われる工事だということです。

工事範囲は、各部屋の専用部分以外の共用部分に対して行われ、主に屋上・外壁・共用廊下・階段などに発生した劣化や損傷の修繕を行います。

その大規模修繕を実施する周期は「12年周期」というのが一般的に言われています。 もちろん分譲・賃貸マンションともに、必ずしも12年周期で実施しなければならない訳ではありませんが、平均すると12年前後の10年~15年周期で大規模修繕が行われています。

このように、マンション経営するオーナーは家賃収入でプラスになるだけでなく、不具合が発生すればその都度補修が必要になるほか、入居率を上げるために大規模修繕を実施しなければならないなど、出費が多いのも事実です。

1-2.賃貸マンションで大規模修繕を実施する3つの目的

賃貸マンションに限らず分譲マンションでも、大規模修繕工事を実施する目的が何なのか具体的に理解していない方もいるのではないでしょうか?

上記の説明の中に答えが隠れていますが、ここからは賃貸マンションで大規模修繕工事を実施する、3つの目的をご紹介します。

1-2-1.目的➀:建物の維持管理および安全の確保

賃貸マンションのオーナーには、建物の維持管理責任があります。 各居室以外の廊下や階段・エレベーターなどの共用部分の日々の清掃はもちろん、電気や給排水設備を支障なく使えるようにするための定期点検・補修など、入居者が快適に日常生活を送れるようにするための、維持管理が求められます。

また、マンションに限らずどんな建物も経年劣化が生じるほか、地震や台風などの自然現象によって損傷や不具合が発生します。その建物に生じた劣化や損傷・不具合をそのまま放置していれば、建物の耐久性が低下するだけでなく、入居者に危険がおよぶ可能性があります。

そこで、建物の耐久性の維持向上、入居者の安全を確保する目的で実施するのが大規模修繕になるのです。

1-2-2.目的➁:資産価値の維持・向上

マンションの外部や内部に劣化や損傷があれば見た目が悪くなるだけでなく、建物の耐久性や機能性の低下を招くため、資産価値の低下が懸念されます。

そこで、大規模修繕を実施に際して建物に生じた劣化や損傷、不具合を修繕することで、建物の耐久性・機能性が向上するとともに、マンション景観の向上にも繋がっていきます。

その結果、マンションの資産価値の維持・向上に繋がるとともに、入居率が低いマンションでは住環境が向上すれば入居率が上がる可能性もあります。

1-2-3.目的➂:時代のニーズに即した居住者の住環境の向上

大規模修繕を実施する一番の目的は、建物の耐久性・機能性の回復にありますが、建物の原状回復だけでなく、現在の住環境の水準に合わせて建物の機能を改良することで、居住者の住環境の向上にも効果が表れてきます。

結果として、こちらも入居率に良い影響を与えてくれるのです。

以上のように、大規模修繕の実施にあたっては高額な工事費は必要になりますが、入居率を上げるためにも大規模修繕はオーナーの義務として行う必要があります。

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2. 賃貸マンションで大規模修繕を実施するときオーナーが注意すること

2. 賃貸マンションで大規模修繕を実施するときオーナーが注意すること

分譲・賃貸マンションで実施する大規模修繕は、基本的に居住者が普通の生活をしている中で工事が行われます。 そのため、大規模修繕の実施にあたっては何かとトラブルが発生するため、実施するオーナーは以下のポイントを注意しておく必要があります。

この項では、賃貸マンションで大規模修繕を実施するとき、オーナーが注意しておきたいポイントを3つご紹介します。

2-1. トラブル回避のために事前に告知する

大規模修繕も工事なので、騒音・振動・臭いが発生するため、工事期間中は入居者に大きな負担がかかってしまいます。 そのため、工事期間中は苦情・クレームが発生して工事の進行が妨げられる可能性もあるのです。

そこで、予め大規模修繕の実施する時期が決まっているときは、入居に伴う重要事項説明のときに工事予定を伝えておく必要があります。事前に知らせておくことで、入居者もある程度の心構えができるとともに、入居予定者も入居の有無の判断ができるようになります。

2-2. 工事中も居住者へ配慮する

分譲マンションで大規模修繕を実施する際、施工業者はエントランスなどに工事掲示板を設置して、工事に関する情報を提供しています。

賃貸マンションでも同じように施工業者に工事掲示板を設置してもらい、工事に関する情報のほかに、騒音・振動・臭いが発生する工事日程や、洗濯物が外に干せない日などの情報を発信してもらいます。情報を発信することで、苦情やクレームなどのトラブルを極力減らすことができます。

2-3. 工事期間中の迷惑料として賃料値下げが請求されるケースについて

賃貸マンションでの大規模修繕の実施にあたって稀に、工事期間中の迷惑料として家賃の値下げが請求されるケースがあります。 工事期間中、長期に渡って生活に不都合が生じるようであれば、その期間に対して家賃の値引き交渉などが可能なケースはあるようですが、基本的に対応は仲介している不動産会社で異なります。

入居時の重要事項説明で工事の実施を事前に知らせていれば、値下げに応じる必要はありませんが、対応は仲介する不動産会社と協議して適切な対応を取る必要があります。

分譲マンションにもいえますが、賃貸マンションで大規模修繕を実施するとき、オーナーはトラブルが発生しないように対策を講じなければならないほか、工事は基本的に施工会社に一任する形になるので、対応力のある施工業者の選定が重要になります。

3.賃貸マンションの大規模修繕の費用目安

3.賃貸マンションの大規模修繕の費用目安

マンション大規模修繕の工事費用は、賃貸でも分譲でもマンションの規模や築年数、劣化状況、工事範囲や工法で異なるため、建物診断を実施して施工会社に見積もりを出してもらわない限り正確な工事費はわかりません。

とはいっても、マンション大規模修繕では”一戸あたり”の費用目安が国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」で明らかにされています。

その実態調査の内容を見ると、「一戸あたり75~100万円:30.6%」で最も多く、次いで「一戸あたり100~125万円:24.7%」、「一戸あたり50~75万円:13.8%」という結果が出ています。

(参照:国土交通省|マンション大規模修繕工事に関する実態調査)http://www.mlit.go.jp/common/001234283.pdf

賃貸マンションと分譲マンションで多少違いはあると思いますが、「一戸あたり75~100万円」が大規模修繕の費用目安として考えておく必要があります。

単純に総戸数を掛ければ大雑把な工事費の目安は算出できるので、マンションオーナーは日常の維持管理費用とは別に大規模修繕を見据えた資金計画を立てておくことが重要になります。

賃貸マンションでも大規模修繕を実施しようとすれば、高額な工事費が必要になります。 そこでこの項では、賃貸マンションで大規模修繕を実施するときの費用についてご紹介いたします。

3-1. 賃貸マンションの「管理費」や「共益費」を貯蓄して大規模修繕を実施

分譲マンションでは、居住者は月々「修繕積立金」と「管理費」を支払っていて、大規模修繕の工事費用は修繕積立金から支払われます。

一方の賃貸マンションの入居者は、毎月家賃とは別に「管理費」もしくは「共益費」を支払っています。 賃貸マンションでの「管理費」と「共益費」は、マンションによって呼び名が異なるだけで「管理費=共益費」と考えておきましょう。

基本的に賃貸マンションの管理費もしくは共益費は、分譲マンションの管理費と同じように、共用部分の保守・維持管理に使われる費用になりますが、大規模修繕の費用として計画的に貯蓄しておく必要があります。

大規模修繕の工事費用の目安は次の項で紹介しますが、高額な工事費用が必要になるため、賃貸マンションオーナーは大規模修繕を見据えた資金計画を立てておくことが重要になります。

4.まとめ

賃貸マンションのオーナーになる方は増えていますが、共用部分の維持管理の義務があることは忘れてはいけません。 日々の維持管理業務はもちろん、おおむね12年周期で大規模修繕を実施する必要があります。

大規模修繕工事を行うことで資産価値の維持・向上に繋がるとともに、入居率が低いマンションでは入居率が上がる可能性もあります。

その際、分譲マンションで実施する大規模修繕は修繕積立金で工事費が賄われますが、賃貸マンションは大規模修繕を考えて資金計画を立てておくことが重要になります。

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