ベランダ・バルコニー施工時の注意点と工事内容を解説
一般的なマンション大規模修繕では、屋上や外壁、廊下や階段などの共用部分のほかに、各お部屋の「ベランダ・バルコニー」も工事範囲に含まれます。
ベランダ・バルコニーでは主に床部の防水補修工事を行っていきます。
その工事に際して注意点があり、工事が行われるまでにベランダ・バルコニーに置かれた私物はすべて片付けなければなりません。
そこで、ここからは大規模修繕に伴うベランダ・バルコニーを施工する際の注意点と、どのような工事が行われるのかご紹介いたします。
このページの目次
1.大規模修繕のベランダ・バルコニー施工時の注意点
マンション大規模修繕は、主に共用部分に発生した劣化や不具合の修繕、および改修工事を行います。
工事内容はマンションによって異なりますが、基本的に各部屋のベランダ・バルコニーも工事範囲に含まれます。
工事はもちろん施工業者が行いますが、ベランダ・バルコニーが工事範囲に含まれている場合、居住者の方は置かれてある私物の取り扱いに注意が必要になります。
1-1.ベランダ・バルコニーの私物は全て片付けが必要!大きな物を置かないのが基本!
マンションのベランダ・バルコニーといえば、開放的な空間として自分のライフスタイルに合わせて、自由にカスタマイズしている方も多いかと思います。しかしマンション大規模修繕に伴って、ベランダ・バルコニーが工事範囲に含まれている場合、置いてある私物はすべて片付けなければなれません。
ベランダ・バルコニーを個人の専有部分と認識している方もいますが、実はマンションのベランダ・バルコニーは「専用使用権が認められた共用部分」という特殊な扱いになるので、直ぐに移動できるもの以外は基本的に置いてはいけないと決められています。言い換えれば、移動が難しいような大きな物を置かないのが基本になります。
マンションのベランダ・バルコニーは、火災などが発生したとき「避難経路」として使用することを前提に設計されているので、避難の妨げとなるような物を置くことはできないようになっています。お住まいのマンションの管理規約にも明記されているはずです。
そこで、マンション大規模修繕に各部屋のベランダ・バルコニーが工事範囲に含まれている場合、私物が置かれてある状態では工事の妨げになるため、私物はすべて自分で片付ける必要があります。
いつ私物を片付けるの?については、事前に施工業者から告知があります。
各部屋のベランダ・バルコニー工事を実施する場合、施工業者は事前に各家庭へのアンケート調査を実施したうえで、工事日程の調整を行います。そして、日程の調整が終われば、工事を実施する部屋の順番で「いつまでに私物を片付けてください。」という告知文書を配布します。
そして、告知を受けたご家庭は、工事予定日までに私物を室内に移動するなどして、スムーズに工事ができるような状態にしなければなりません。その際、片付けが済んでいなければ工事の進行に影響し、全体の工程に遅れが生じてしまうので、施工業者から告知があったときは、期日までに片付ける必要があります。
ちなみに、片付けが面倒だからといってベランダ・バルコニー工事を断ることは基本的にできません。
1-2.私物の片付けに関わる費用は全て「自費」!
私物の片付けに伴って、一時的に室内に移動できるものは問題ありませんが、次項で紹介する撤去や廃棄が必要な物を置いてある場合、その撤去や廃棄は全て「自費」で行わなければなりません。
先程も説明した通り、マンションのベランダ・バルコニーは「専用使用権が認められた共用部分」であり、私物を置くなどの行為は私的使用にあたるため、全て自費で撤去・廃棄を行う必要があります。
稀(まれ)に私物の片付けに伴う費用を管理組合や管理会社、工事の施工業者に請求しようとする方がいますが、請求しても誰も支払ってくれません。そのため、マンションのベランダ・バルコニーには、直ぐに移動できるもの以外は置かないのが基本となるのです。
1-3.施工時はベランダに入れなくなる
こちらは片付けとは話が違いますが、ベランダ・バルコニーでは床面の防水工事、および壁面の塗装工事を実施するので、工事期間中はベランダ・バルコニーに入れなくなるほか、窓も開けられなくなります。
また工事中だけでなく、工事が終わったあとも数日入れない期間があるので、不明な点や何か不具合が発生したときは、すぐに施工業者に申し出るようにしましょう。
ここまで、大規模修繕に伴うベランダ・バルコニー施工時の注意点をご紹介しましたが、マンションのベランダ・バルコニーは基本的に「避難通路」として使用することを前提として設計されています。そこで、大きな物置などが設置されていると避難のときに障害になる可能性があるため、マンションでは原則的にベランダ・バルコニーにも物を置かないように決められているはずです。
マンションのベランダ・バルコニーは何もなければ無機質なので、何かしら置きたくなるお気持ちも分かります。
その際は大規模修繕工事が実施されることをしっかり考慮して、室内に入れられるものや、直ぐに撤去でるようなものを設置することが重要です。
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2. マンション大規模修繕のベランダ・バルコニー施工時に片付けが必要なもの
ここまでベランダ・バルコニー工事に伴う私物の片付けについて説明しましたが、実際どんな物を片付ける必要があるのか?と、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?
そこでこの項では、一般的なマンションのベランダ・バルコニーに設置してある物を想定して、ベランダ・バルコニー工事に伴った片付けが必要な物をご紹介していきます。
2-1.「物置」は室内に入れるなどして片付ける
ベランダ・バルコニーに物置を設置している方がいますが、当然片付けなければなりません。
室内に入る大きさの物置なら問題ないものの、室内に入らない物置は、一時的に別の場所に移動したり撤去したりする必要がありますが、その際の費用は先程も説明した通り、全て自費になります。
そのためくどいようですが、大きな物置を設置するのは止めた方が良いでしょう。
2-2. 「ウッドデッキ」は一時撤去して片付ける
ベランダ・バルコニーは無機質なので、おしゃれな「ウッドデッキ」を敷いている方がいます。
しかし、せっかく敷いたウッドデッキも工事の邪魔になるので一時撤去しなければなりません。
今では簡単に設置・撤去ができるウッドデッキも販売されているので、基本は設置しないのが一番ですが、設置するときは大規模修繕が行われることを頭に入れて、簡単に撤去できるものを設置しましょう。
2-3.「ベランダタイル・バルコニータイル」は一時剥がして片付ける
上記のウッドデッキのように、ベランダ・バルコニーにおしゃれな「ベランダ・バルコニータイル」を敷いている方も多くいます。 今ではインターネット通販で簡単に購入できるので、自分の好きなタイルでベランダ・バルコニーをコーディネートする方は多いのですが、こちらも工事の邪魔になるので剥がして片付けなければなりません。
ベランダ・バルコニータイルは簡単に設置・撤去できますが、大規模修繕の際は撤去および室内での保管が必要になるので、その点はしっかり考慮してタイルを設置する範囲を考えましょう。
2-4.「人工芝」も剥がして片付ける
子供がいるご家庭ではベランダ・バルコニーに「人工芝」を敷いているお宅もありますが、工事に合わせて剥がして室内に保管しなければなりません。
しかし、ベランダ・バルコニーのコンクリート面に直接人工芝を敷いてしまうと、雨などの水分によってカビの温床になってしまい、室内での保管は不衛生なうえに健康的にも心配があるので、廃棄も検討する必要があります。廃棄に関わる費用も自費で行わなければならないので、人工芝を敷くときは廃棄することを考慮しておきましょう。
2-5.「植物(植木・観葉植物)」は室内に入れるか処分して片付ける
マンションのベランダ・バルコニーに設置する代表的なものが、植木や観葉植物などです。
無機質なベランダ・バルコニーに置けば癒しの効果を与えてくれますが、工事に伴って室内に移動するか、もしくは処分する必要があります。
しかし、せっかく育てている植物を処分するのも忍びないという方もいると思います。
その際は、友人などに相談して一時的に預かってもらうか、マンションによっては共用部分に一時的に移動できるスペースを確保しているケースもあるので、処分するまえに色々調べてみましょう。
2-6.「BS・CSアンテナ」は取り外して室内で保管
現在、衛星テレビが楽しめる共用のBS・CSアンテナを設置しているマンションが多いですが、そのような設備がないマンションでは、各家庭でベランダ・バルコニーの手すりなどに「BS・CSアンテナ」を設置していると思います。
一見工事の邪魔にならないように感じますが、マンション大規模修繕では、周囲に足場を設置する関係上、手すりにアンテナが設置されていると邪魔になってしまうので、一時的に撤去が必要になります。
その際の撤去や再取付けは居住者側で行わなければなりませんが、自分で出来ないというときは施工業者に問い合せてみましょう。その際、無償なのか有償なのかの確認も行い、有償のときは設置した電気店にお願いした方が確実で安心です。
2-7.「物干し竿掛け」は一時取り外して再取付け
マンションによって違いはありますが、ベランダ・バルコニーに「物干し竿掛け」が設置されているマンションがあります。
物干し竿掛けがあるマンションでは、塗装工事の際に邪魔になるため、施工業者が一時撤去して再取付けを行います。
物干し竿掛けの取り外し・再取付けは施工業者側で行いますが、自立式の物干し台や自分で設置した洗濯物掛けなどは室内に移動する必要があります。
また当然ですが、ベランダ・バルコニー工事中は洗濯物が干せなくなるので、その期間は乾燥機や部屋干しが基本になります。
2-8.「網戸」の取り外しも必要
ベランダ・バルコニー工事に伴って、私物の片付けとともに窓に設置された「網戸」の取り外しも必要になります。
なぜ取り外しが必要なのか?と疑問をお持ちの方もいますが、単純にこちらも工事の邪魔になるからです。
実はマンションに取り付けられているサッシや窓ガラス・網戸も「専用使用権が認められた共用部分」に該当するので、工事にあたって網戸は取り外さなければならないのです。
マンション大規模修繕での網戸の取り扱いについては「大規模修繕では「網戸」の取り外しが常識?その対処法を詳しく解説」こちらで詳しく解説しているので、気になる方は こちらもご覧ください。
2-9.「室外機」も撤去しなければならないのか?
ここまでベランダ・バルコニー工事に伴って片付けが必要な物をご紹介してきましたが、エアコンの「室外機」も片付けが必要なのか心配な方もいるのではないでしょうか?
ご説明している通り、ベランダ・バルコニーに置いてある私物は全て片付けが必要になりますが、例外としてエアコンの室外機に関しては、施工業者側で室外機を移動させて施工していきます。当然、費用は必要ありませんが、工事期間中はエアコンが使用できなくなります。
ただし、室外機が床面据置型で冷媒管が短いときは、自己負担で一時的に別の場所に移設しなければならなくなります。
その詳しい説明は「大規模修繕のとき室外機は一時移設!作業台や踏み台にされやすい?」こちらでご紹介しているので合わせてご覧ください。
以上が、マンション大規模修繕のベランダ・バルコニー施工時に片付けが必要な物になりますが、マンションにお住まいの方はベランダ・バルコニーにあまり大きな物は置かないようにしておくことが大切です。
3.大規模修繕に伴うベランダ・バルコニーの工事内容
大規模修繕で行うベランダ・バルコニーの補修工事では、主に床面の「防水補修工事」を施工していきます。
そのベランダ・バルコニーの防水補修工事で現在主流になっているのが「塩ビ防滑シート貼り工法」です。
詳しい工法の説明は後でしますが、簡単に施工内容を説明しておきましょう。
まず、塩ビ防滑シートの周囲にある排水溝や巾木部分にウレタン塗膜防水を施工していきます。そして、ウレタン塗膜に10cm程度ラップさせて防滑塩ビシートを貼っていく工法になります。
上記説明中の「巾木(はばき)」とは壁と床の境目を仕上げる見切り材になり、壁の最下部に取り付ける細長い横板のこと。また、「ラップさせて」のラップとは、建築用語で「重ねる」ことを意味しています。
そこで、ベランダ・バルコニーの防水工事の「ウレタン塗膜防水」や「塩ビ防滑シート」ついて簡単にご説明いたします。
3-1.ウレタン塗膜防水とは?
ウレタン塗膜防水とは、ウレタン樹脂を塗布して硬化させて防水層を形成していく防水工事の工法の一つ。
液体状のウレタン樹脂を塗ることで防水層を形成し雨水の浸入を防ぎます。
ウレタン塗膜は施工が簡単なうえに、ほかの防水工法と比べると比較的安価で施工できるメリットがあります。さらに、既存の防水材の上から重ね塗りもできるので、防水補修では最も使われている工法になります。
基本的にウレタン樹脂は液体状の材料なので複雑な形状の場所でも施工できるため、大規模修繕ではベランダ・バルコニーや廊下、階段の排水溝や巾木で利用されます。
3-2.塩ビ防滑シートとは?
塩ビ防滑シートは、マンションなどの集合住宅、学校や福祉施設、店舗などの施設で使われるシート状の床材になります。
マンションなどの集合住宅では、主に共用廊下や階段、ベランダ・バルコニーで使われ、現在の大規模修繕では多くのマンションが採用しています。基本的に人が出入りする廊下や階段、ベランダで使われる床材なので、耐久性に優れ、防滑性も高く、汚れが取れやすい特徴を持っています。
また、マンションの廊下や階段、バルコニーは機能性とともにデザイン性も求められますが、塩ビ防滑シートは数多くのメーカーから販売されているので、配色やデザインが豊富にあるのも大きなメリットです。
以上、ベランダ・バルコニーの防水補修工事の工事内容をご紹介しましたが、現在は「塩ビ防滑シート貼」が主流ということだけでも覚えておいていただければ幸いです。
4.ベランダ・バルコニーの防水補修工事の流れ
前項ではベランダ・バルコニーの防水補修工事で主流なのは「塩ビ防滑シート貼り工法」と説明しましたが、どのような流れで工事が行われるのか簡単にご紹介しておきます。
工事の流れ的には「ウレタン塗膜防水→塩ビ防滑シート貼」になりますのでそれぞれの工程をご覧ください。
4-1.ウレタン塗膜防水の工事流れ
防滑シートが剥がれた部分からの浸水を防ぐため、防滑シートを貼る部分に合わせて10.0cm以上余裕を持ってウレタン塗膜防水を施工していきます。
4-1-1.工程1 下地調整および清掃
防水工事の施工前に高圧洗浄したあと下地の確認を行い、ひび割れ、モルタルの浮きなどの下地調整を行います。
4-1-2.工程2 プライマーの塗布
4-1-2.工程2 プライマーの塗布
プライマーとは建築工事で使われる下塗り塗料のことで、主に接着剤の役割を果たす塗料です。
そのプライマーをローラーや刷毛で塗布していきます。
4-1-3.工程3 ウレタン樹脂防水材の塗布
プライマーが乾いたら、ウレタン樹脂防水材をローラーやコテを使って塗布し防水層を形成します。
4-1-4.工程4 トップコートの塗布
トップコートとは、ウレタン塗膜の防水層を守るための塗料。
ウレタン塗膜を紫外線などから守る役割を持っていますが防水材ではありません。定期的にトップコートを塗り直すことで耐久性を良くすることが可能です。
最後に、そのトップコートをローラーや刷毛で塗布すればウレタン塗膜防水は完了です。
4-2.塩ビ防滑シート貼工事の流れ
ウレタン塗膜が終わったら、次に塩ビ防滑シート貼を行います。
4-2-1.工程1 下地調整および清掃
高圧洗浄あと床面の下地調整に合わせて勾配不良の調査を行い、不良があれば速乾性の樹脂モルタルで調整していきます。
4-2-2.工程2 エポキシ系専用接着剤の塗布
耐熱性、耐水性、耐候性に優れているエポキシ系専用接着剤をコテなどで塗布していきます。
4-2-3.工程3 塩ビ防滑シートの接着
塩ビ防滑シートは事前にベランダに合わせてカットしておきます。
接着剤を塗布したあとシートの接着作業を行います。
4-2-4.工程4 ジョイント部(継ぎ目)の溶接
シートとシートの継ぎ目から浸水してしまうので、しっかり溶接していきます。
4-2-5.工程5 端部のシリコンシール処理及び仕上げ
最後に、端部からの浸水を防ぐためにシーリング処理すれば完了です。
以上、ベランダ・バルコニーで行われる防水補修工事の流れをご紹介しましたが、どんな工事なのかだけでも知っておいていただければと思います。
5.まとめ
一般的なマンション大規模修繕工事では、共用部のほかに各お部屋のベランダ・バルコニーの防水補修工事も行われます。
その際の注意点として、施工業者がベランダ・バルコニーの工事に入るときまでに、置いてある私物はすべて片付けておく必要があります。私物が置いてある状態では床面の施工が当然できません。
本文中でも説明した通り、マンションのベランダ・バルコニーは避難経路としての役割を持っているので、基本的に物は置いてはいけないようになっています。
そこで、もし何かしらの植物などをおきたいときは、部屋の中に入れられるものや直ぐに動かせるものを置くことが大切です。
あまり大掛かりな物置やガーデニング、ウッドデッキやタイルなどを設置していると、大規模修繕のとき余計な出費が発生する可能性もあるので、ベランダ・バルコニーに物を置くときは注意しておきましょう。