工事中のよくある不具合と気をつけるポイントを解説
マンションでは定期的に大規模修繕を行うことで安全性を確保し、住み心地も向上します。
しかし、大規模修繕後に不具合が生じることもあるため注意が必要です。ここでは大規模修繕で不具合が起こる原因とその防止策について解説していきます。
このページの目次
1. 大規模修繕でよくある不具合の例
2. なぜ不具合が発生してしまうのか
3. 不具合を避けるためにやるべきこと
4. まとめ
1.大規模修繕でよくある不具合の例
大規模修繕の際によく見られる不具合の例をいくつか挙げていきます。
不具合箇所を見てみると、一般の人でも明らかにおかしいと分かるものもあります。
ここで挙げたような不具合が後で判明した場合には、工事をやり直さなければなりません。
1-1.外壁のクラック(亀裂)
外壁にひび割れが確認できる場合があります。
ひび割れの箇所から腐食が進んで壁が脆くなってしまうことも多いです。
コンクリートを固める際に時間差ができることで、不連続になるとひび割れが発生しやすくなります。
1-2.外壁のチョーキング
壁には塗装を施しますが、長年紫外線や雨風に晒されていると、塗膜の顔料が粉のようになって出てきてしまいます。
塗装から5~10年程度経過して起こる場合にはごく普通の現象です。
しかし施工不良により塗装後間もない時期から起こってしまう例もあります。
1-3.外壁の汚損
外壁の汚れが目立って、建物の外観を損ねてしまいます。
カビが付着することもあるため、外観だけの問題にとどまらず、耐久性にも影響することが多いです。
チョーキングと同様に年月の経過により起こりますが、施工不良により短期間で汚損に悩まされるケースもあります。
1-4.鉄骨の錆・腐食
鉄などの金属でできている部品が空気中の酸素と反応して酸化してしまいます。
水で濡れた状態のまま放置してしまったり、施工時の作業環境が悪かったりして起こることが多いです。酸化して錆が発生した部分から腐食が進んでいきます。
1-5.塗装の剥離
外壁の塗装が剥がれ落ちる不具合です。主にひび割れが発生した箇所から、広がっていくことが多いです。施工から年月が経過すると、塗装の吸着力が弱くなるのに加えて、雨水などが入り込むことで起こりやすくなります。
1-6.コンクリートの白華現象(エフロレッセンス)
コンクリートに含まれる炭酸カルシウムなどのアルカリ成分が、結晶化して表面に出てくる不具合です。施工直後に起きやすい現象で、日当たりの良い場所でよく見られます。そのまま放置しておくと、なかなか落とせなくなってしまうため注意が必要です。
1-7.鉄骨の爆裂
主に鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の建物で、クラックを放置しておいた場合に起きやすい不具合です。内部に雨水などが入り込み、鉄が錆びることで体積が膨張します。その結果、まるで爆発したような具合でコンクリートの一部が崩壊して中の鉄骨がむき出しになってしまいます。
1-8.外壁タイルの浮き
外壁タイルの下地にクラックが発生した場合に起こる不具合です。コンクリートと躯体との間に隙間が空いてしまうことを指します。一般の人が見ただけではなかなか気づきにくく、浮きが疑われるときには打診棒やテープなどを使用して判断することが多いです。
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2.なぜ不具合が発生してしまうのか
そもそも大規模修繕は経年により劣化した箇所を直し、安全かつ快適に住めるようにするために行ものです。
しかし、工事直後に不具合が見つかってしまうこともあります。
その原因について詳しく説明していきます。
2-1.工事業者との情報交換が不十分
工事業者は工事を行うことに関しては確かにプロですが、普段の使用状況などははっきりと分かっていません。
工事業者に対してマンション側の情報が十分に伝わっていないことが原因で、不具合に繋がるケースが多いです。
2-2.工事業者のミスによるもの
工事業者の職人もミスを犯してしまう可能性はあります。
熟練した職人だけでなく、経験の浅い職人が担当することもあるのです。
ほとんどの場合にはきちんとやり直してくれますが、ミスに気が付かず、そのまま工事を完了させてしまうケースも見られます。
2-3.工事業者の選定が良くない
工事を行う業者の中には、サービスの質があまり良くない業者も存在します。
職人は問題なくても、現場代理人のマネジメント能力が低い場合もあるのです。
そのような業者を選定してしまうと、施工後に不具合が発見される可能性が高くなります。
2-4.修繕積立金が足りていない
マンションでは住人から修繕積立金を少しずつ集めており、それを大規模修繕の費用に充てています。
しかし、修繕積立金が足りないと、予定していた内容の工事が行なえません。
無理に予算内で済むように予定を変更したために、不具合に繋がってしまう可能性もあります。
2-5.管理人が工事の内容についてよく理解していない
施工途中で疑問に感じることなどは現場代理人に確認すれば、不具合を未然に発見できることもあります。
しかし、管理人が工事内容について、あまりよく理解していないとそれも難しいです。
よく理解していれば、おかしいと思うはずのことでも、見過ごしてしまいます。
2-6.管理人が不具合に対して十分に備えていない
不具合は早い段階で発見できれば、やり直してもらえることも多いです。
瑕疵担保責任という制度もあります。
しかし、管理人が不具合に対しての認識が甘く、十分な備えをしていないと発見が遅れてしまいがちです。
発見が遅れると瑕疵担保責任も使えなくなってしまいます。
3.不具合を避けるためにやるべきこと
大規模修繕後も住人が安心して住めるようにするためには、不具合を未然に防ぐ対策が必要です。ちょっとした確認を行うだけで、不具合防止に繋がります。では、具体的にどのようなことをやっておくべきなのか説明していきます。
3-1.養生漏れがないかを確認
養生とは塗装を行う際にシートなどで覆うことです。
養生を行うことで、余計な箇所に塗料が付着するのを防止できて塗装の質を高めるのにも役立ちます。
しかし、養生が不十分だと塗料が漏れてしまうことがあり、これを養生漏れといいます。
不具合に繋がりやすいため、養生漏れがないかどうか確認しておくことが大切です。
3-2.工事現場写真は途中経過も撮影
後で不具合が出ても工事業者が非を認めないケースもあるため、そのような場合に備えて、工事現場写真を撮影しておくことが大事です。
途中経過もいくつか撮影しておけば、工事の過程が分かり、不具合が発生したときに、業者の非を証明するのに役立ちます。
3-3.共有部などの金具を外した下地を確認
下地に関する不具合が多いため、施工前の下地の状態を確認しておくことが大事です。経年による劣化具合を確認する上でも、金具を外した下地を見ておく必要があります。状態を見た上で、現場代理人に施工方法などを質問しておくのが望ましいです。
3-4.床シートの張替えには色・素材の確認には最新カタログを使用
発注ミスや納品ミスなどにより、色や素材が異なる床シートが使われてしまう場合もあります。古いカタログを元に発注してしまうケースもあるため、最新カタログを用いての確認が必要です。素材が違うと、耐久性などにも影響してきます。
3-5.電気・照明は施工説明書の確認
電気配線や共用部の照明は住人にとって重要度が高いです。施工説明書を確認して、工事期間や停電になる時間などを把握しておいてください。電気の容量を大きくする場合などには、工事による変更点などの確認も必要です。
3-6.小さな電気工事でも配線図を作ってもらう
電気工事は一部分のみの小さな工事でも、マンション全体に影響が及ぶこともあります。そのため、電気工事の規模が小さくても配線図を作ってもらう必要があるのです。配線図があれば、不具合が起こったときに原因の特定に役立つ場合もあります。
4.まとめ
大規模修繕の後にはさまざまな不具合が発見される可能性があります。
不具合により、マンションの住み心地が悪くなり、安全性も損なわれることも多いです。
不具合を直すための工事も行わなければなりません。
そのため、不具合を未然に防ぐための対策を講じておくのが望ましいです。
管理人は工事内容についてある程度詳しく知っておき、細部を確認する必要があります。
不具合を想定して、工事現場写真の撮影なども行っておくことが大切です。