大規模修繕に伴う「階段」の工事内容!確認申請が必要なの?
マンション大規模修繕は、建物の外部・内部に発生した劣化や損傷の修繕を行う工事ですが、建物内部の共用階段と外部の鉄骨階段も工事範囲に含まれます。
そのマンション内部の共用階段に関して、建築基準法の中では主要構造部に該当し、過半(半分以上)の修繕もしくは模様替を行うときは、建築確認申請の提出が求められています。
しかし、一般的な大規模修繕の階段工事で、確認申請の提出が必要なのか?疑問がある方もいるでしょう。
そこでこの記事では、マンション大規模修繕に伴う「階段」の工事内容や、建築確認申請が必要なのかについて説明していきます。
このページの目次
1. マンションの「階段」も主要構造部!大規模の修繕・模様替になる定義とは?
マンション大規模修繕とは、月日の経過によって発生する経年劣化や損傷を修繕する工事になり、分譲マンションの長期修繕計画の中に盛り込まれ、一般的に12年前後の周期で行われています。
大規模修繕はマンションの「共用部分」、具体的には今回紹介する階段のほか、外壁や屋上・共用廊下・ベランダ・バルコニー・設備関係・外構施設など、工事範囲および内容は多岐に渡ります。
その大規模修繕に関しても他の建築工事と同じように、建築基準法の中で定義が設けられており、階段に関する記載もあります。
1-1. 大規模修繕の定義とは?主要構造部の過半の修繕・模様替
建築基準法の中で大規模修繕の定義は「第2条第14号及び15号」の中で設けられています。
その条文を紹介すると以下の通りになります。
“第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。“
このように定義されていますが、簡単に説明すれば『マンションの主要構造部の一種以上について行う過半(半分以上)の修繕・模様替が「大規模の修繕または模様替」』ということになります。
そこでポイントになるのが「主要構造部」ですが、これは建物の「壁・柱・床・はり・屋根・階段」を指し、階段も主要構造部に含まれ、半分以上修繕もしくは模様替を行うときは、建築確認申請の提出が必要になります。
ちなみに、建築基準法の中の階段は建物内部の共用階段を指し、外部に設置された建物構造に影響を与えない鉄骨階段は該当しません。
1-2. 一般的な大規模修繕の階段工事は確認申請が不要
マンション大規模修繕に伴って共用階段が工事範囲に含まれているとき、確認申請の提出が必要なのか?と疑問がある方もいると思いますが、一般的な大規模修繕に伴う共用階段の修繕工事は、確認申請の提出は必要ありません。
確認申請の提出が必要なのは、あくまで共用階段の半分以上に対して、建物の構造に影響を与えるような修繕・模様替を行うときです。つまり、共用階段に発生した劣化や損傷を修繕する、表面的かつ部分的な一般的な大規模修繕工事は、確認申請の提出は必要ないのです。
マンション大規模修繕の定義については「大規模修繕の定義とは?建築基準法の定義など簡単解説」こちらで詳しく解説しているので、これから大規模修繕を計画するマンションの関係者の方は参考にぜひご覧ください
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2. マンション大規模修繕の「階段工事」の工事内容
マンション大規模修繕の中で、建物内部の共用階段と外部の鉄骨階段の修繕を行いますが、この項では内部と外部の階段に対して行う修繕工事の内容をご紹介します。
内部の共用階段は塩ビ防滑シート貼り工事、外部の鉄骨階段は腐食部分の修繕工事がそれぞれ行われます。
では、具体的にそれぞれの工事内容を見ていきましょう。
2-1. マンション内部の「共用階段」の修繕は「塩ビ防滑シート貼り工法」が主流
マンション内部の共用階段の修繕は、排水溝や巾木(壁と床の境目を仕上げる見切り材)部分に「ウレタン塗膜防水」を施し、仕上げ材としてウレタン塗膜に10cm程度重ねて「防滑塩ビシート」を貼っていく『塩ビ防滑シート貼り工法』が主流になっています。
ここからは「ウレタン塗膜防水」と「塩ビ防滑シート貼り」の特徴や作業の流れなど簡単にご紹介します。
2-1-1. ウレタン塗膜防水とは?一般的な工事の流れ
ウレタン塗膜防水は、そのままウレタン樹脂を塗布して防水層を形成していく防水工事の一種です。
ウレタン樹脂は液状なので、形状が複雑な場所でも容易に施工できるため、階段や廊下・ベランダ・バルコニーの排水溝や巾木の防水材として広く利用されています。
ウレタン塗膜防水工事の流れ
➀下地調整および清掃
➁プライマー(下地とウレタンの密着性を高める接着剤の役割を果たす塗料)を塗布
➂ウレタン樹脂を塗布
➃仕上げとしてトップコート(劣化を防ぐための保護塗料)を塗布すれば完了です。
2-1-2. 塩ビ防滑シート貼りとは?一般的な工事の流れ
塩ビ防滑シートは、マンションやアパートなどの集合住宅の共用廊下・階段・ベランダ・バルコニーで使用されるシート状の床材です。
人が歩く場所で使われる床材なので、耐久性が優れているのはもちろん、名前にも入っている通り、滑りにくいのが大きな特徴になります。また、汚れが取れやすいという特徴もあるので、清掃が容易にできます。
塩ビ防滑シートは様々なメーカーから販売されているため、デザインや配色が豊富で、マンションの廊下や階段といったデザイン性が重視される場所に、最適な床材になります。
塩ビ防滑シート貼り工事の流れ
➀下地調整および清掃
➁エポキシ系の専用接着剤を塗布
➂塩ビ防滑シート貼り(ウレタン塗膜に10cm程度重ねて貼り付ける)
➃ジョイント(継ぎ目)部を溶接
➄端部をシーリング処理すれば完了です。
塩ビ防滑シートはデザイン性が優れているとともに、滑りにくい機能や歩行音を抑制してくれる機能を持っているので、大規模修繕に伴う共用階段や廊下・ベランダ・バルコニー工事には、不可欠な床材になっています。
2-2. 屋外の「鉄骨階段」の工事内容
建物の外部に鉄骨階段が設置されているマンションでは、大規模修繕工事のタイミングで修繕を行います。
ただし、外部の鉄骨階段は錆などの腐食が発生しやすい部位なので、5年に1度程度の頻度で塗装の塗替えを行うのが望ましいと言われています。
マンション大規模修繕に伴って鉄骨階段の補修を行うときは、塗装の塗替えとともに鉄が腐食している箇所があれば、部分的に鉄骨を交換しなければなりません。
また、築年数が30年以上のマンションに設置されている鉄骨階段は、錆などで鉄骨の腐食が進行していると考えられるため、3回目の大規模修繕で全面的なリニューアル工事を考慮した計画が必要になります。
3. まとめ
マンション大規模修繕は、建物に発生した劣化や損傷を修繕する工事ですが、内部の共用階段と外部の鉄骨階段も、工事範囲に含まれます。
そこで、内部の共用階段の修繕工事にあたって、建築基準法の主要構造部に階段が含まれ、確認申請の提出が求められます。しかし、一般的な大規模修繕に伴う共用階段の修繕工事は、確認申請の提出は必要ありません。
その階段工事で現在主流になっているのが「塩ビ防滑シート貼り工法」です。大規模修繕に伴う共用階段や廊下・ベランダ・バルコニー工事には、塩ビ防滑シートが不可欠な床材になっています。
普段エレベーターを利用している方も、階段を使う機会があれば、床面にどんなシートが使われているか見てみてはいかがでしょうか。