「配管は2回目以降の大規模修繕で補修・交換の検討を!
『水』は日常生活の中で絶対に欠かせない存在です。
その水を供給しているのが給水管で、使った水を排水するのが排水管になりますが、建物の外観と同じように月日の経過とともに劣化していきます。
マンション大規模修繕は、建物の共用部分に発生する経年劣化や損傷を修繕する工事ですが、建物内部に張り巡らせている配管(給水管・排水管)も劣化状況に応じて、補修もしくは交換しなければなりません。
詳しくは後で説明しますが、2回目以降の大規模修繕工事のタイミングで、劣化状況に応じて補修、もしくは交換を行う必要があります。
そこでこの記事では、大規模修繕工事に伴う給水管・排水管の修繕について詳しくご紹介いたします。
このページの目次
1. 大規模修繕で配管(給水管・排水管)を修繕するタイミング
マンションに限らずどんな建物も、経年劣化は避けられません。
自然の温度変化や太陽の紫外線の影響によって劣化が進行するほか、地震や台風などの自然災害によって建物が損傷するケースもあります。
そこで、発生した経年劣化や損傷を修繕するため、一般的に「12年周期」で行われているのが「大規模修繕工事」です。
大規模修繕は「共用部分」に発生する劣化や損傷の修繕を行いますが、配管(給水管・排水管)も共用部分に該当するので、劣化状況に応じて補修および交換が行われます。
1-1. マンションの給水管・排水管で修繕が必要なタイミングは?耐用年数(寿命)と修繕目安
マンションの給水管・排水管で修繕が必要なタイミングは、先程説明した通り、一般的な12年周期で大規模修繕を計画しているマンションでは、2回目(24年)以降の大規模修繕工事で、補修もしくは交換するようになります。
でも、なぜ2回目の大規模修繕で補修・交換が必要なのか?と疑問がある方もいると思いますので、ここからは給水管と排水管に分けて、それぞれの耐用年数や修繕目安を簡単にご紹介します。
1-1-1. 給水管の耐用年数(寿命)と修繕目安
一般的にマンションの給水方式は、大きく分けて以下の2種類のいずれかの方式が採用されています。
マンションの給水方式
・貯水槽方式
・水道直結方式
基本的に、貯水槽方式を採用しているマンションでは、定期的に清掃や点検が行われていますが、各家庭に張り巡らされている給水管はチェックが難しく、劣化が進行すれば赤水の発生や漏水に繋がる危険があります。
その給水管は、法的に「建物付属設備」に該当し、耐用年数は「15年」と定められています。
しかし実際には、法定耐用年数15年よりも長く利用されており、修繕目安に決まった定義はありませんが、以下の年数が修繕目安として一般的といわれています。
給水管の修繕目安
・亜鉛メッキ鋼管:10年~20年
・硬質塩ビライニング鋼管:15年~20年
・硬質塩化ビニル管:20年~30年
・ステンレス鋼管:30年~35年
あくまで目安ですが、修繕目安はおおむね20年前後になるため、12年周期で大規模修繕を計画しているマンションでは、2回目(24年目)以降の大規模修繕で、給水管の補修もしくは交換を含めた計画をたてておく必要があるのです。
1-1-2. 排水管の耐用年数(寿命)と修繕目安
マンションの排水設備は水が使われる場所によって配管の種類が異なります。
一般的にマンションの排水管は大きく以下の4種類に分類されます。
マンションの排水設備
・汚水管:トイレの排水
・雑排水管:台所・浴室・洗面所などの生活排水
・雨水管:屋根やベランダの雨水
・汚水処理施設:浄化槽
上から3番目までの3種類の排水管は、どのマンションにも存在しますが「汚水処理施設」いわゆる浄化槽は、公共下水道がない地域のみで設置が義務付けられています。
上記の3種類の排水管は、法的に給水管と同じ「建物付属設備」に該当し、耐用年数も同じ「15年」と定められています。しかし排水管も、法定耐用年数15年よりも長く利用されており、一般的な修繕目安は以下のようになっています。
排水管の修繕目安
・硬質塩化ビニル管:20年~30年(配管場所で異なる)
・硬質塩化ビニルライニング鋼管:20年~25年
以前は「亜鉛メッキ鋼管」や「鋳鉄管」という配管も使われていましたが、現在は上記2種類の排水管が主流になっています。
排水管もあくまでも目安ですが、20年が修繕目安になり、12年周期で大規模修繕を計画しているマンションでは、2回目以降に排水管の補修もしくは交換を視野に入れた計画を立てておく必要があります。
1-2. 給水管と排水管で発生する主な劣化症状
上記で給水管と排水管の修繕目安をご紹介しましたが、修繕せずに放置すれば劣化が進行して、様々な劣化症状が表れてきます。簡単な例でいうと、水を出すと色が付いていたり、まれに水が詰まったりするなどの異変があれば、給水管・排水管が劣化していると考えられます。
ここからは給水管と排水管で表れてくる劣化症状をご紹介します。
1-2-1. 給水管の劣化症状
給水管も10年20年と使い続ければ劣化が進み、築年数が20年以上のマンションでメンテナンスなどを行っていない場合、以下のような劣化症状が表れてきます。
給水管の主な劣化症状
・白濁水
腐食した亜鉛メッキが溶けだして白く濁った水が出る
・黄水および赤水
給水管内部に錆が生じたのち腐食して溶けだすのが原因で、錆の混入率が低いと「黄水」、錆の混入率が高いと「赤水」が出る
・漏水
給水管に亀裂が生じ、天井・床面・露出配管などから漏水する
・水の出が悪くなる
給水管内部で錆がコブ上になり、詰まって出が悪くなる
現在このような症状が表れている家庭は、給水管の劣化が進行していると考えられます。
1-2-2. 排水管の劣化症状
排水管は使った水を排水するのが主な役割ですが、その排水管の劣化症状の代表的なものが「詰まり」です。
特に台所や浴室・洗面所といった油分を含んだ水を排水する「雑排水管」で、頻繁に詰まりが発生します。
台所の排水には油分が多く含まれるため、排水し続けると排水管内部に油分が付着して管内が細くなってしまい、詰まりやすい状態になってしまいます。浴室や洗面所も、毛髪や垢などが溜まって詰まるケースはよくあります。
排水管が詰まった状態を放置していると、油が腐って悪臭が発生するほか、流した水が逆流して漏水するケースもあります。
以上のように、給水管・排水管ともに劣化症状が表れているのにそのまま放置していると、生活面に支障がでてくる可能性があるため、2回目以降の大規模修繕のタイミングで修繕が必要になるのです。
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2. 大規模修繕に伴う「給水管」「排水管」の修繕工法と費用目安
ここまで、給水管・排水管の修繕目安や劣化症状をお話ししてきましたが、ここからは、劣化した給水管・排水管の修繕工事について紹介していきます。
給水管および排水管の劣化を放置すれば、先程説明したようにトラブルが発生するため、そのトラブルを未然に回避するために、2回目以降の大規模修繕で給水管・排水管の補修もしくは交換が必要になります。
2-1. まずは給水管・排水管の「劣化診断」の実施
給水管・排水管の補修の有無を判断するため、大規模修繕に合わせてまずは、給水管と排水管の「劣化診断」を受けなければなりません。
劣化診断の方法は、依頼する調査会社によって多少異なりますが、一般的な調査として、主に以下の3種類の調査が採用されています。
給水管・排水管 劣化診断の種類
・外観調査
給水メーター廻りの給水管・専有部分やピット(配管のメンテナンスのために作られた空間)の排水管の外観を確認
・抜管調査
給水管・排水管の一部を抜き取って内部を確認
・内視鏡調査
給水管・排水管内部を内視鏡を使って確認
以上の調査を行ったのち、使われている配管の種類・劣化状況・配管ルートなどのポイントを考慮したうえで、給水管・排水管の改修工事を行います。
2-2. 給水管・排水管の2つの修繕工法
劣化診断を行ったのち、給水管および排水管の劣化症状に応じて、主に以下のいずれかの工法で修繕工事を行っていきます。
簡単に説明すると「現状の給水管・排水管をそのまま利用する」か「新しい配管に交換するか」のいずれかの方法で工事が行われます。
給水管・排水管の修繕工法
・更生(ライニング)工法
・更新(交換)工法
具体的には、既存の給水管・排水管はそのままで、内部を綺麗に更生(ライニング)するか、新しい給水管・排水管に交換(更新)するか、いずれかの工法で修繕を行います。
といっても、実際にどんな作業を行うのか、主な作業内容と概算の費用目安を紹介していきます。
2-2-1. 修繕工法➀:給水管・排水管の更生(ライニング)
給水管・排水管の更生(ライニング)とは、給水管・排水管内部に発生した錆の腐食の進行を抑制する、防錆処理を行う工法を指し、実施することで、給水管・排水管の寿命が15年~20年延長すると言われています。
具体的には、錆が発生している給水管・排水管内部のクリーニングを行ったのち、エポキシ樹脂を注入して塗膜を形成して、その塗膜で水との接触を断って腐食の進行を抑制する、という工事になります。
給水管・排水管の更生(ライニング)に伴う費用について、正確な数字は算出できませんが「一戸当たり10万円~」が目安になります。
もちろん目安なので高くなるケースはありますが、次に紹介する「更新(交換)」よりも工事費が抑えられ、かつ工期も短いのが特徴です。また施工日数に関して、世帯数や配管の長さで全体の施工日数は異なりますが、1世帯1日で作業は完了します。
2-2-2. 修繕工法②:給水管・排水管の更新(交換)
給水管・排水管の更新(交換)は、そのまま新しい給水管・排水管に交換する工法です。
新しい給水管・排水管に交換すれば、水に関する全てのトラブルが解消され、以降20年は給水の面では綺麗な水が供給でき、排水の面でも詰まりが起きにくくなります。
しかし、給水管・排水管の更新(交換)にあたっては「一戸当たり30万円~」が目安になり、さらに交換の際、壁や床を剥がして再度補修しなければならないため、合わせれば「一戸当たり50万円~」の費用が必要になります。
工事期間に関しても、配管の交換にあたっては壁や床を剥がして再度補修する工程が増えるため、1世帯3~5日程度の日数がかかります。
以上のように、給水管・排水管の修繕は劣化状況に応じて更生(ライニング)または更新(交換)のいずれかの工法で行われますが、まずは劣化診断を受けたのち、コンサルタントを交えてどちらの工法で修繕を行うのか、しっかり協議する必要があります。
3. まとめ
「水」はマンションに限らず、人が生きていくうえで絶対に必要な存在です。
その大切な水を供給しているのが給水管で、使った水を排水するのが排水管になりますが、マンションでは2回目以降の大規模修繕のタイミングで修繕が必要になります。
もちろん劣化状況で変わってきますが、給水管・排水管の寿命は20年前後になり、一般的な12年周期で大規模修繕工事を計画しているマンションでは、2回目(24年目)以降が修繕のベストタイミングといえます。
その給水管・排水管の修繕にあたっては、まずは劣化診断を受けて、更生(ライニング)するのか、更新(交換)するのか判断する必要があります。更生と更新ではかかる費用が異なるため、コンサルタントを交えてしっかり協議しましょう。