「床工事」の工事個所の種類と作業の注意点を解説
マンション大規模修繕は、主に建物共用部分を工事範囲とした劣化や不具合の修繕を行う工事です。
外壁や屋上、エレベーターなどの共用設備とともに建物内の「床」も工事範囲に含まれます。
「床」とは各お部屋の外部と共用部分の床になり、主に以下の3ヶ所の防水工事を行っていきます。
・バルコニー
・共用廊下
・内部階段
ここからは、マンション大規模修繕にまつわる「床工事」に関して、工事箇所の種類別にどんな工事を行うのかご説明いたします。
このページの目次
1. 大規模修繕の床補修工事箇所の種類
2. マンション床補修工事の作業工程と注意点
3. まとめ
1.大規模修繕の床補修工事箇所の種類
マンション大規模修繕にまつわる床補修工事は主に「防水工事」を施工していきます。
その工事範囲は、バルコニー、共用廊下、内部階段の3ヶ所になりますが、最近の大規模修繕の床補修工事で主流になっているのが塩ビ防滑シート貼り工法です。
先に簡単な工事内容を説明しておくと、塩ビ防滑シート周囲の排水溝や巾木部分はウレタン塗膜防水仕上げを施して、数センチラップさせて塩ビ防滑シートを貼る工法になります。
上の工事内容の説明で使っている「巾木(はばき)」とは、壁と床の境目を仕上げる見切り材になり、壁の最下部に取り付ける細長い横板のことです。また、数センチラップさせる「ラップ」は、建築用語で「重ねる」ことを「ラップさせる」といいます。 ここからの説明で度々使っていくので覚えておいてください。
従来のウレタン塗膜防水工法の場合、床面の小さな凹凸に汚れが溜まりやすく、作業工程もプライマーからトップコートまで3回塗りになるため、塩ビ防滑シートに比べると工程が長くなります。
そのため、人の出入りが多い共用廊下や階段での施工には不向きといえ、工事費も割高になるため塩ビ防滑シートが現在の大規模修繕では主流になっているのです。
詳しい作業日程は後ほどご紹介しますので、床補修工事箇所の種類別にどんな工事を行っていくのか見ていきましょう。
1-1.各部屋のバルコニー
バルコニーはマンションの築年数によって、築十年以上では防水モルタル又はコンクリート打ち放し、ウレタン塗膜防水仕上げが主流になっていました。
それが現在では、ウレタン塗膜防水や塩ビ防滑シート仕上げが主流になっていますが、配色やデザインを選べる防滑シート仕上げに変更するマンションが多くなっています。一般的に防滑シートの周囲や排水溝はウレタン防水仕上げを行い、数センチラップ(重ねる)させて防滑シートを貼る方法が使われます。
1-2.共用部分の廊下
共用廊下の床補修はマンション”共用部”として、防水性能はもちろんデザイン性が特に重視されます。
そのため、現在の大規模修繕では配色やデザインの選択肢が豊富な塩ビ防滑シート仕上げが多くのマンションで採用されています。工事の方法はバルコニーと同じように、溝や巾木はウレタン防水仕上げを施しラップさせて防滑シートを貼っていきます。
防滑シートも今では、歩行音の抑制、転倒時の衝撃を吸収、といった機能を持った防滑シートもあるので、マンション環境やニーズに合わせて選択できるメリットがあります。
1-3.共用部分の内部階段
内部の階段も廊下と同じように、防水性能とともにデザイン性が求められるため塩ビ防滑シートが採用されています。
防滑シートの配色やデザインは廊下と同じものを使いますが、階段を別の配色・デザインにしているマンションもあります。
施工は廊下と同じように、溝と巾木はウレタン防水仕上げを行います。
ここまで床補修工事の工事範囲3ヶ所の工事内容をご覧いただきましたが、現在のマンション大規模修繕の床補修工事は「塩ビ防滑シート貼り工法」が主流になっています。
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2.マンション床補修工事の作業工程と注意点
大規模修繕では基本的に着工前説明会を開催しているので、その時点である程度の作業日程はお知らせしています。
着工後は一般的な施工会社では、バルコニーは各ご家庭の都合に合わせて工事日程を調整します。
また、共用廊下や階段に関してはフロア毎に施工日程が計画され、エントランスの掲示板やエレベーター内にお知らせと工程表を掲示するほか、施工前にはフロア別にお知らせするのが一般的です。
床補修工事は、塩ビ防滑シート貼り工法(ウレタン塗膜防水~防滑シート貼り)で施工を進めますが、ここからはこの2つの工法の作業工程と注意点をご説明いたします。
2-1.ウレタン塗膜防水の作業工程と注意点
ウレタン塗膜防水は、ウレタン樹脂を塗布して防水層を形成していく防水工事の工法です。
ウレタン塗膜は液体状の材料なので複雑な形状の場所でも施工できるメリットがあり、大規模修繕の床補修工事ではバルコニーや廊下、階段の排水溝や巾木で利用されます。
排水溝・巾木ウレタン塗膜防水の作業工程
1.下地調整および清掃
2.プライマー(下地とウレタンとの密着性を高める糊のようなもの)の塗布
3.ウレタン樹脂防水材の塗布
4.トップコート(劣化を防ぐための保護塗料)仕上げ
防滑シートの剥がれ部からの浸水を防ぐため、防滑シートを貼る部分に合わせて10.0cm以上余裕を持ってウレタン塗膜防水を施し防滑シートを貼っていきます。
2-2.塩ビ防滑シート貼の作業工程と注意点
塩ビ防滑シートは、主にアパートやマンションなどの集合住宅の共用廊下や階段、バルコニーに使用されているシート状の床材。
人が出入りする場所に使用するため、耐久性に優れ、滑りにくく汚れが取れやすい特徴があり、大規模修繕でも多くのマンションで採用されています。
また、塩ビ防滑シートはサンゲツ、東リ、タキロン、タジマなどのメーカーが製造・販売を行っているので、配色やデザインが豊富。マンションの共用廊下や階段などデザイン性が重視される場所に最適な床材になります。
塩ビ防滑シート貼の作業工程
1.下地調整および清掃
2.エポキシ系専用接着剤の塗布
3.塩ビ防滑シートの接着
4.ジョイント部(継ぎ目)の溶接
5.端部のシリコンシール処理および仕上げ
マンションではデザイン性とともに防滑性能も不可欠。歩行音も抑制してくれるので、大規模修繕では塩ビ防滑シート貼り工法が主流となっています。地域環境に合わせて配色やデザインを採用すれば、住環境のイメージアップにも繋がります。
2-3.既存仕上げがモルタル及びタイルの注意点
バルコニーや廊下、階段の既存仕上げがモルタルやタイルの場合、その多くのマンションでは大規模修繕に伴って塩ビ防滑シート貼りに変更しています。
作業工程は上記の説明と同じ流れで進められますが、事前に下地の確認を行い、モルタルのひび割れや浮きはエポキシ注入などで下地処理を行います。
2-4.床補修工事に伴う注意点
床補修工事に伴う注意点として、ウレタン塗膜防水や防滑シート貼で使うエポキシ系の接着剤は臭いがします。
事前にお知らせは行いますが、作業中はサッシを締めておく必要があります。
また、バルコニーや共用廊下の施工にあたっては不用品があると施工ができません。
そのため、事前にお知らせしている工事日程に合わせて、バルコニーは空調室外機以外の不用品は片付けて、共用廊下に置いている子供用の自転車やベービーカーなどの生活用品も室内に片付けておくよう周知徹底をお願いします。
3.まとめ
マンション大規模修繕では経年劣化した箇所の修繕を行いますが、「床」も工事範囲に入ります。
各お部屋のバルコニーと共用廊下及び階段の3ヶ所が工事範囲となり、現在のマンション大規模修繕の床修繕工事は「塩ビ防滑シート貼工法」が主流になっています。
塩ビ防滑シートは耐久性に優れ、滑りにくく掃除しやすい特徴があり、配色やデザインが豊富なのでマンション共用部の廊下や階段に最適な床材になります。
工事日程などは施工会社から事前にお知らせがあるので、それまでにバルコニーや廊下の不用品は片付けるようにしましょう。