消火(消防)設備とは?消火設備の修繕目安を解説
マンションなどの共同住宅で地震などの災害は怖いですが、特に注意しておきたいのが「火災」です。
一度火災が発生すれば建物自体はもちろん、人命に大きな危険が及んでしまいます。
そのため、消防法でマンションの規模ごとに必要とされる消防(消火)設備の設置が義務付けられています。
また、消防法では防火管理者の選任や消防設備の定期点検も義務付けられているほか、耐用年数に応じて設備の取替を行わなければなりません。
ここからは、マンションに設置が義務付けられている消防(消火)設備の種類や点検基準、合わせて大規模修繕に伴う消火設備の修繕・取替目安をご紹介いたします。
このページの目次
1. マンションに設置する消火設備の種類および点検基準とは?
2. 大規模修繕に伴う消防(消火)設備の修繕および交換目安
3. まとめ
1.マンションに設置する消火設備の種類および点検基準とは?
“火災”は、一戸建て住宅はもちろんマンションなどの共同住宅で万一発生すれば大惨事になってしまいます。
そのため、マンションは防火対象建物として指定され、規模に応じて消防(消火)設備の設置が義務化されています。 また、マンションでは「防火管理者」の選任しなければならないほか、万一火災が発生したときに確実に消火設備が作動するための「定期点検」も義務化されているのです。
この項では、マンションの消防(消火)設備の種類や防火管理者の選任方法、定期点検基準をそれぞれ簡単にご説明いたします。
1-1.消防法で義務化されているマンションの消防(消火)設備の種類
まず、「消防法 第17条第1項」では建築物の消防設備に関して以下のように定められています。
『政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従って、設置し、及び維持しなければならない。』
(参照:e-Gov|消防法)
https://elaws.e-gov.go.jp/
このように「政令で定める技術上の基準に従って、設置し、及び維持しなければならない。」と定められ、設置が必要な消防設備は「消防施行令 第7条(消防用設備等の種類)」の中で以下のように決められています。
『法第17条第1項の政令で定める消防の用に供する設備は、消火設備、警報設備及び避難設備とする。』
(参照:e-Gov|消防法施行令)
https://elaws.e-gov.go.jp/
そこで、実際にマンションで設置が義務付けられている消防(消火)設備の種類は以下の通りになります。
消防の用に供する設備
・消火設備:消火器、屋内・屋外消火栓設備、スプリンクラー設備(11階以上)など
・警報設備:自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備など
・避難設備:すべり台、避難はしご、救助袋、緩降機など
消防用水
・防火水槽またはこれに代わる貯水池その他の用水
消防活動上必要な施設
・排煙設備
・連結送水設備
・連結送水管
・非常コンセント設備(11階以上)
以上の消防(消火)設備の設置がマンションで義務化されており、特にマンションの規模が11階以上になればスプリンクラー設備や非常コンセント設備などの設置が必要になります。
1-2.マンションでは「防火管理者」の選任が義務付けられている
防火管理者の選任は「消防法第8条」の中で定められています。 要点のみ簡単に説明すると、「一定規模の建築物の所有者、管理者は防火管理者を選任して、建物の防火管理業務を行わせる。」ように決められています。
マンションは「非特定防火対象物」に区分され、収容人員50名以上で延べ床面積が500m2以上のマンションでは、防火管理者の選任が義務付けられています。また、店舗を併設して収容人数30名以上のマンションも防火管理者を選任しなければなりません。
さらに、延べ床面積が500m2未満のマンションは「乙種防火対象物」、500m2以上は「甲種防火対象物」に分けられ、「甲種防火管理新規講習」または「乙種防火管理講習」のいずれかの防火管理講習を受講して、防火管理者としての資格を取得する必要があります。
そこで、防火管理者に選任された方は以下の防火管理業務を実施しなければなりません。
防火管理者の主な防火管理業務
・防災計画の策定
・防災訓練(少なくとも年1回)
・マンション内の消防(消火)設備の点検
・火気使用または取扱いの監督
・その他の防火管理上必要な業務
このように、一定規模のマンションでは防火管理者の選任が義務付けられています。
もし防災管理者を選任していなかったときは消防法で罰則が科せられるケースがあるので、最寄りの消防署などに確認して防火管理者は確実に選任しましょう。
1-3.マンションでは消防設備点検を年2回実施しなければならない
マンションでは防火管理者の選任とともに、消防用設備の点検および報告も義務付けられています。
これも消防法第17条の中で定められており、以下の周期で点検および報告をしなければなりません。
消防(消火)設備の点検
・機器点検:6ヶ月に1回以上
・総合点検:1年に1回
・消防署への点検報告:3年に1回
これらの点検は防火管理者が主導して行い、3年に1回消防署へ点検内容および結果を報告しなければなりません。
万一報告を怠ると30万円以下の罰金などの罰則が科せられるので、点検した内容はしっかり記録しておくことが大切です。
以上、マンションの消防(消火)設備に関する義務などをご紹介しましたが、マンションなどの共同住宅で火災が発生すれば大惨事になってしまうので、定められた義務は確実に実施しましょう。
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2.大規模修繕に伴う消防(消火)設備の修繕および交換目安
マンションには様々な消防(消火)設備が設置され、万一の火災に備えています。
その消防(消火)設備も耐用年数があり、設置年数に応じて修繕もしくは取替が必要になります。
ここでは、主な消防(消火)設備である消火器、屋内消火栓、自動火災報知設備、避難はしご、スプリンクラー設備の耐用年数や取替目安をご紹介します。
2-1.消火器の有効期限および交換目安
マンションには消火器は当然設置されていますが、設置基準は「消防法施行令10条(消火器具に関する設置基準)」で定められています。
一般的に「粉末ABC消火器」が設置され、設置本数はマンションの延べ床面積や建物の構造から算出されます。 設置本数は火災予防条例にも定められておりますので。最寄りの消防署で確認してみましょう。
その消火器の耐用年数は10年と言われています。
消火器の製造から10年経過している消火器は新しいものに交換がしなければなりませんが、内部の薬剤詰め替えで対応できる消火器もあるので確認が必要です。
2-2.屋内消火栓(配管)および消火ポンプの修繕・取替目安
屋内消火栓は、消火器とともに火災が発生したときの初期消火を目的に設置され、基本的に人が操作する消火設備です。
屋内消火栓は、水源、消化ポンプ(加圧送水装置)、起動装置、屋内消火栓(開閉弁、ホース、ノズルなど)、補助水槽および配管で構成されています。
その構成する仕組みによって、一般的に2人で操作する「1号消火栓」や、1人で操作できる簡易的な「易操作性1号消火栓」、「2号消火栓」という種類に分かれます。
屋内消火栓の耐用年数は20~25年程度になりますが、消化ポンプは10年で点検補修が必要になり、屋内消火栓ホースは3年ごとに耐圧試験を実施しなければなりません。
2-3.自動火災報知設備の耐用年数と取替目安
自動火災報知設備は、皆さま良くご存知の火災報知機のことです。
マンション内で火や煙が発生したとき、火災報知機のボタンを押すことで大音量の警報ベルが鳴るほか、消防署へ自動的に火災警報が送信される仕組みになっています。
自動火災報知設備の耐用年数は10~20年程度が取替目安になりますが、半年に1回の定期点検で不具合が発生している場合はその都度部品の交換が必要になります。
2-4.避難はしごの耐用年数と交換目安
一般的なマンションでは各部屋のバルコニー床面に「避難はしご」が設置されています。
その他にも消防法では建物階数に応じて、すべり台や緩降機、救急袋などの避難器具の設置が義務付けられています。
耐用年数はいずれも25~30年程度と長く使えますが、定期点検などで不具合が発生している箇所はその都度交換が必要です。
2-5.スプリンクラー設備の設置基準と修繕目安
スプリンクラー設備は火災が発生したときの初期消火を目的として、主に天井部に設置される消火設備です。
火災検知から消火まですべて行い、水源、消火ポンプ(加圧送水装置)、自動警報装置(流水検知装置、表示装置、警報装置等)、スプリンクラーヘッド、送水口、配管・弁類および非常電源で構成されます。
スプリンクラー設備は、11階以上のマンションで設置が義務付けられています。
スプリンクラー設備の耐用年数は法的(建物付属設備)に8年と定めせれていますが、実際は20年程度利用できます。
ただし、消化ポンプは10年で補修が必要になり、自動警報装置に不具合が発生している場合は、その都度部品を交換しなければなりません。
以上、マンションに設置される主な消防(消火)設費の修繕・取替目安を紹介しました。
それぞれ定期点検の際、不具合がある部品などを発見した場合はその都度部品を交換して、万一火災が発生したとき確実に機器が作動するようにしておかなければなりません。
3.まとめ
マンションには万一の火災に備えて、実に様々な消防(消火)設備が設置されています。
いずれも消防法や消防法施行令で定められ、違反した場合は罰則が科せられるケースがあるので注意が必要です。
また、消防設備の設置のほかにも、防火管理者の選任や定期点検も義務化されているので、記録を保存して的確に行わなければなりません。
このような消防(消火)設備も設置年数に応じて修繕や取替が必要になります。
基本は半年に1回の定期点検で不具合などをチェックして、一般的な12年周期で大規模修繕を計画しているマンションでは、2回目以降の大規模修繕で消防(消火)設備のリニューアルを計画しておきましょう。