天井(軒天)の修繕工事!劣化内容と工事の進め方を解説
マンション大規模修繕は、建物の各部に生じた劣化や損傷を修繕する工事ですが、「天井」も工事範囲に含まれます。
天井と聞けば、部屋の天井を思い浮かべる方は少なくないでしょう。 しかし、大規模修繕での天井は、共用部の廊下や階段、専有部のバルコニーの天井を指し、劣化部分を補修して塗装工事を行っていきます。
ここからは、マンションの天井部に劣化が生じる原因と大規模修繕で行われる修繕の内容と工事の流れをご紹介いたします。
このページの目次
1. マンション共用部・専有部の「天井」で生じる劣化とその原因
2. 大規模修繕の天井(軒天)塗装工事の流れと塗料の種類
3. まとめ
1.マンション共用部・専有部の「天井」で生じる劣化とその原因
大規模修繕は、建物に生じた経年劣化や外的要因による損傷を修繕して資産価値の維持を図るとともに、現在の住居水準に合わせてマンション性能をグレードアップして、より住みやすい環境にしていくことを目的に行われます。
主に外壁や屋上、共用部の床面、内部の鉄部などの修繕や改修を行っていきますが、「天井」も工事範囲に含まれます。
1-1.マンション大規模修繕での「天井」とは?
まず、大規模修繕での「天井」は、建設業界では「軒天(のきてん)」と呼ばれています。
ほかに「軒天井」や「上裏(あげうら)」と呼ばれることもありますが、「軒天」が一般的です。
軒天とは軒先の裏側にある天井のこと。一戸建て住宅では屋根の家から出っ張った部分の裏側部分が軒天になります。
しかし、マンションなどの共同住宅での天井(軒天)は、共用部の開放廊下や階段、専有部のバルコニーの天井部分を指します。
基本的に開放廊下や階段、バルコニーの天井部分は外部面になるので工事範囲は「外壁」に含まれます。
天井部分は、外壁や屋上と同じように常に自然環境の影響を受けているため、劣化が進みやすい部分の一つです。
中でも経年劣化による「塗膜の剥離」が多く発生します。
また、仕上げがモルタル塗りやコンクリート打放しのマンションでは、ひび割れや爆裂などが発生しているケースがあります。
1-2.天井(軒天)に「塗膜の剥離」が発生する原因
マンションの開放廊下や天井、バルコニーの天井部分に、塗装が剥がれている部分を見かけたことはないでしょうか。
塗膜の剥離は、塗装膜の密着不良によって浮きや剥離が発生している状態になり、進行すれば塗装面が剥がれて下地が剥き出しの状態になります。そのような状態になると、美観が損なわれるだけでなく躯体を保護する役割を果たせなくなります。
その塗膜が剥離する原因は、施工後1年~2年で発生するようなら施工業者の施工不良と言えるでしょう。 しかし、築年数10年を超えるマンションで塗膜の剥離が発生する場合は、経年劣化による接着力低下や、雨水などの浸水が影響しています。
外壁タイルのひび割れ部やシーリング材の劣化部から塗膜内部に雨水などが浸水すると、湿気によって塗膜の接着力が弱まり、浮きや剥離が発生するのです。
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2.大規模修繕の天井(軒天)塗装工事の流れと塗料の種類
マンションの外壁はもちろん、開放廊下や階段、バルコニーの天井(軒天)は基本的に外部に面しています。
そのため、紫外線があたる部分は経年劣化によるチョーキング(チョークのような粉が付着する劣化現象)や塗膜の変退色(変色または退色)が生じてきます。また、何らかの要因で塗膜に雨水などが浸水した場合、塗膜の浮きや剥離が発生します。
そこで、大規模修繕では外部に面している天井の修繕も工事範囲に含まれ、主に塗装工事を施していきます。
2-1.天井部の塗装工事の流れ
大規模修繕では天井部に生じた劣化の補修を行ったあと、塗装仕上げを施していきます。外壁の塗装と同じように、コンクリート面を塗膜で保護することで中性化を防ぐ効果があります。
その塗装工事の一般的な流れは以下の通りです。
天井部分の塗装工事の流れ
➀高圧洗浄
➁下地処理
➂下塗り塗料材の塗布
➃中塗り・上塗り塗料材の塗布
天井部を含めた外壁塗装工事はこのような流れで行われますが、ここからは高圧洗浄と下地処理の役割と、下塗りおよび中塗り・上塗りで使われる塗料の種類や特徴をご紹介いたします。
2-1-1.高圧洗浄と下地処理の役割
高圧洗浄は高圧洗浄機を使って、外壁や廊下や階段、バルコニーの天井に付着した汚れやカビなどを洗い流す作業です。
この作業を怠ると、汚れやカビが付着したまま塗装することになります。
汚れが付着したまま塗装してしまうと塗料の接着力が低下して塗膜の浮きや剥離の原因になるので、高圧洗浄で入念に汚れを落としていきます。
洗浄が終わったら、塗膜の浮きや剥離している部分の補修と下地処理を行います。
まず、塗膜に浮きや剥離が発生している部分はヘラや研磨紙で綺麗に取り除きます。その際、境目部分で再度剥がれが起きないよう丁寧に行います。
そして、塗料の密着性や機能性を高めるため、下地コンクリート面を平滑にする下地処理を行っていきます。
モルタルやコンクリート部にひび割れや、爆裂が発生している部分は、防錆処理後、エポキシ樹脂モルタルで補修を行います。
このような下地処理が適切に行われていないと、塗料の密着性や仕上がりに影響します。塗装の耐久性、仕上がりを決めるのが下地処理であり、適切な処理を行なうことで綺麗で長持ちする塗装が可能になるのです。
2-1-2.下塗り材の主な種類と特徴
下塗り材は下地と上塗り材の密着性・定着性を良くして、仕上がりを綺麗にするための重要な塗料です。
上塗り材には、耐候性、低汚染性、防カビ、防藻性などの機能はあるものの密着力に欠けています。そこで、下地と上塗り材の密着性を高めるために行うのが下塗りであり、ローラーや刷毛を使って丁寧に塗布していきます。
外壁や天井部で使われる下塗り材の主な種類は以下の通りです。
下塗り材の種類
・シーラー
・フィーラー
・微弾性フィーラー
それぞれの特徴を簡単にご紹介します。
・シーラー
シーラーは上塗り材が下地に浸透するのを防ぐとともに、下地と上塗り材の密着性を高めて塗膜を安定させるための塗料です。
シーラーを塗ると汚れやひび割れを塞ぎ平滑化できるので、中塗り・上塗り塗装がキレイに仕上がります。
・フィーラー
フィーラーは、下地の状態を整えるためのコテ塗り材(下地調整材のようなもの)になります。
水溶性で、例えるなら水に溶いた小麦粉のようにものになり、少し厚みを付けて塗れるので、軽微な凹凸やひび割れを埋めることもできる塗料です。
・微弾性フィーラー
現在主流の下塗り材です。弾性ということでシーラーよりも膜に厚みがあり、軽微な凹凸やひび割れを埋める機能もあります。
ただし、下地と上塗り材の密着性はシーラーに劣ることから、一般的に既存塗膜の塗替えに使われています。
2-1-3.中塗り・上塗り材の主な種類と特徴
マンション大規模修繕で行う外壁や天井などの塗装では、一般的に中塗りと上塗りは同じ塗料を使います。
中塗りと上塗りの2度塗りすることで塗膜厚が確保でき、より耐久性がある仕上げになります。
下塗りと同じように、ローラーや刷毛を使って塗りムラがないよう丁寧に塗布していきますが、ローラーや刷毛は塗料の飛散防止にも効果があります。
上塗り材の主な塗料は以下の4種類になりますが、耐久性・耐候性および価格を★で表現すると以下のようになります。
塗料の種類および耐用年数 | 耐久性・耐候性 | 価格 |
---|---|---|
アクリル樹脂塗料:5~8年 (耐久性などは標準レベルで経済性に優れている) | ★★ | ★ |
ウレタン樹脂塗料:7~10年 (耐久性・耐候性に優れポピュラーな塗料) | ★★★ | ★★ |
シリコン樹脂塗料:10~15年 (耐久性・耐水性に優れ大規模修繕では主流) | ★★★★ | ★★★ |
フッ素樹脂塗料:15~20年 (耐候性が優れているが価格が高いので使用されない) | ★★★★★ | ★★★★ |
一般的に大規模修繕は12年~15年周期で行われています。
そこで、耐用年数や次回の施工が容易なことから、現在の大規模修繕ではシリコン樹脂塗料が主流になっています。
以上、外壁を含めた天井で行われる塗装工事についてご紹介しましたが、どのような流れでどんな塗料が使われているのかだけでも覚えておいていただければ幸いです。
3.まとめ
マンション大規模修繕は、建物に生じた劣化や損傷の修繕を行いますが、天井部も工事範囲に含まれます。
建築業界では「軒天」と呼ばれ、大規模修繕での天井は共用部の開放廊下と階段の天井、専有部のバルコニーの天井を指します。
天井は外部に面しているため、経年劣化による汚れや変退色が起こるほか、塗膜の剥離が発生します。
そこで、天井部は外壁と同じように洗浄・下地調整を行ったあと、塗装工事を施していきます。
基本は、下塗り~中塗り・上塗りと3回塗りになり、予算や環境に合わせた塗料が使われます。
ここでは、天井部でどのような工事が行われるのかだけでも覚えていただければ幸いです。