大規模修繕に伴う躯体の補修・修繕工事内容を解説
マンションで行われる大規模修繕は、主に建物に生じた劣化や損傷を修繕および改修する工事です。
資産価値の維持・向上を図るとともに、現在の住居水準をグレードアップしてより快適な住環境にすることを目的に行われます。
その大規模修繕では様々な箇所の補修・修繕工事を行いますが、建物の「躯体(くたい)」も工事範囲に含まれます。
中には「躯体とは建物のどの部分を指しているのか?」と、疑問に感じる方もいるのではないでしょうか?
ということで今回は、先ず「躯体」とは建物のどの部分を指示しているかを解説してから、マンション大規模修繕で行われる躯体に関係した補修・修繕工事の内容をご紹介いたします。
このページの目次
1. 建物の「躯体」とは?
2. 大規模修繕に伴う躯体の劣化と修繕方法
3. まとめ
1.建物の「躯体」とは?
マンションなどの建物は経年劣化とともに外部環境の影響による劣化や損傷は避けられません。
そのため、一般的な分譲マンションでは管理組合によって長期修繕計画が立案され、おおむね12年周期で大規模修繕工事が行われています。主に建物の劣化部や損傷部の補修・修繕を行っていきますが、「躯体」の修繕も含まれます。
ここからは「躯体」とは建物のどの部分を指すのかご説明いたします。
また、合わせて躯体構造の種類と躯体の修繕内容についてもご紹介いたします。
1-1.建物の「躯体」とは?建物の骨組みのこと
まず、建物の躯体部分についてご説明していきます。
建物は大きく「躯体」と「外部・内部仕上げ」に分けられますが、躯体がどの部分を指しているのか分からない方も多いのではないでしょうか?
建物の躯体とは、人間や物の重量、地震などの災害に耐えるための建物を支える骨組み部分を指します。
「スケルトン」とも呼ばれ、主に基礎(基礎ぐい)、柱、壁、梁(はり)、床、屋根などを指し、内外装の仕上げや設備以外の部分が躯体になります。つまり躯体以外の部分が「仕上げ」です。
余談ですが、建築基準法では大規模修繕の定義として以下のように定めています。
“ 第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。 “
(参照:電子政府の総合窓口 e-Gov|建築基準法)
http://elaws.e-gov.go.jp
この定義の中の”主要構造部”は、建築基準法では「壁、柱、床、梁(はり)、屋根又は階段」を指します。
例えば、建物に柱が20本あれば、過半(半分以上)となる11本以上に対して修繕または模様替を行えば大規模な修繕・模様替になるということです。
このように、躯体とは『建物の構造を支える骨組み』ということだけでも覚えていただければ幸いです。
1-2.建物の躯体構造の種類は大きく「木造」「RC造」「鉄骨造」の3種類
躯体は建物の構造を支える骨組みですが、ここで参考のために構造躯体の種類をご紹介いたします。
躯体は構造体に使われる材料によって、大きく以下の3種類の躯体構造に分類できます。
代表的な躯体構造の種類
・木造(W造)
・鉄筋コンクリート造(RC造)
・鉄骨造(S造)
日本で建設されているほとんどの建物はこのいずれかの躯体構造になっています。
木造(W造)は一般住宅では常識ですが、主要な構造体を木材で構成する建物です。
鉄筋コンクリート造(RC造)はマンションやビルなどの建物で採用され、主要な構造体が鉄筋とコンクリートを組み合わせた材料で構成されています。圧縮に強いコンクリートと、引張力に強い鉄筋を組み合わせることで、耐久性や耐火性、耐震性に優れた建物が建設できます。
鉄骨造(S造)は、主要な構造体を鉄製や鋼製の部材で構成する建物です。
部材の厚みによって重量鉄骨と軽量鉄骨の2つに分類されます。特徴はRC造よりも重量が軽く工期が短いため、主に体育館や工場など開放的な大空間の建物で使用されます。
マンションの一般的な躯体の構造は、木造はないとして、主に鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)、高層マンションなどではSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)が採用されています。
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は、鉄筋コンクリートと鉄骨を組み合わせた構造体で構成する建物になります。
RC造より耐久性などが優れ、柱や梁などは細くできますが、一番のデメリットは建設費用が高額になることです。
以上、建物の躯体構造の種類をご紹介しましたが、お住まいのマンションはおそらく「鉄筋コンクリート造(RC)」ではないでしょうか。
1-3.マンション大規模修繕の工事範囲と躯体の修繕内容
躯体とは何か理解できたでしょうか?
そこで、一般的なマンション大規模修繕の工事範囲をご紹介しておきます。
一般的なマンション大規模修繕の工事範囲
・外壁:下地コンクリート補修工事、タイル補修・貼り替え工事、塗装工事
・屋上:防水改修工事
・共用部廊下、階段、バルコニー:防水改修工事
・鉄部:錆(さび)部や塗装剥離部の塗装工事
・設備:電気設備、給排水設備など
この工事範囲の中で、マンション大規模修繕において躯体に関係する工事が何かといえば、「外壁の下地コンクリート補修工事」が該当します。
ちなみに、先程ご紹介した建築基準法による定義とは違いがあり、一般的なマンションで行われる大規模修繕は上記工事を同時進行で行うため大規模修繕と呼ばれているだけなのです。
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2.大規模修繕に伴う躯体の劣化と修繕方法
マンションの躯体に発生する問題は主に「外壁」に生じます。 一般的なマンションの躯体構造は鉄筋コンクリート造です。そのため、外壁下地コンクリート面の「ひび割れ」、「爆裂」といった症状が主に発生するのです。
2-1.マンションの躯体部分(外壁下地コンクリート)の修繕方法
建物の外壁は、紫外線や雨風などの気候の変化や季節ごとの気温の変化を受け続けているため、経年劣化や損傷は避けられません。その劣化や損傷で多いのが外壁下地コンクリート面になります。
マンション大規模修繕工事では、外壁下地コンクリート面に生じた「ひび割れ」、「爆裂」の補修・修繕が行われます。
ここでは、それぞれの修繕方法を簡単にご紹介します。
2-1-1.外壁下地コンクリートの「ひび割れ」修繕方法
外壁にひび割れ、建築用語で「クラック」が入る原因は、気温の変化や建物に加わる地震などの外力が影響します。
幅0.3mm以上、深さ5mm以上のひび割れは「構造クラック」と呼ばれ、幅0.2mm以下の軽微なひび割れは「ヘアークラック」と呼ばれています。
ヘアークラックの場合、ひび割れ部にセメント材などを充填して補修を行いますが、構造クラックの場合は「Uカットシーリング」と呼ばれる工法で修繕を行っていきます。そのUカットシーリング工法は以下のような流れで進めていきます。
Uカットシーリング工法の流れ
➀ひび割れ箇所に電動カッターなどの工具でU字に溝を作り清掃を行う
➁シーリング材専用のプライマー(接着剤のようなもの)を塗布する
➂シーリング材の充填
➃段差にセメント材を充填して平らに均せば完了
2-1-2.外壁下地コンクリートの「爆裂」修繕方法
コンクリートの「爆裂」とは、上記のひび割れ(クラック)などから雨水が浸水してコンクリート内の鉄筋に錆が生じ、膨張してコンクリートを押し出している状態を指します。
そのまま放っておくと鉄筋が露出した状態になり、万一高層階からコンクリート片が落下した場合は大惨事になる危険があるので、早急に対処しなければなりません。そのコンクリート爆裂の補修は以下のように行われます。
コンクリート爆裂の補修方法
➀コンクリート内部から赤い錆汁が流れている部分、鉄筋が腐食し膨張している部分、既に鉄筋が露出している部分を中心に打診調査を行う。
➁修繕部分のコンクリートをハンマーなどで落とし、鉄筋を露出させてブラシなどで錆を落としながら清掃を行う。
➂露出させた鉄筋部分に錆止め塗料を塗布して防錆処理を行う。
➃防錆処理を行った欠損部をエポキシ樹脂モルタルで埋め戻す。
➄最後に下地調整を行い、塗装処理を行えば完了です。
以上のように、大規模修繕に伴う躯体にあたる外壁コンクリートのひび割れ(クラック)と爆裂が発生している箇所の修繕を行っていきます。
3.まとめ
マンション大規模修繕では、建物の劣化や欠損部の補修・修繕を行いますが、躯体も工事範囲に含まれます。
躯体とは、物の構造を支える基礎や柱、壁、梁などを指し、大規模修繕では外壁コンクリートの補修・修繕が躯体部分の工事にあたります。
外壁コンクリートの劣化として、ひび割れ(クラック)及び爆裂があり、それぞれ補修・修繕を施していきます。
外壁のクラックや爆裂をそのままにしていれば、そこから内部構造に影響があるため、大規模修繕の機会だけでなく発見したらその都度修繕するようにしましょう。
また躯体工事を含む大規模修繕工事を行う場合に、管理会社に任せっきりにしてしまうと気づかない間に高額な工事金額になってしまうこともあるため注意が必要です。
大規模な修繕工事に向けて代表的な4つの注意点をまとめたので、気になる方は以下のリンクからぜひチェックしてみてください。