シーリング工事とは?大規模修繕での施工箇所や方法を解説
マンション大規模修繕では実にさまざまな工事は行われますが、重要な工事の一つが「シーリング工事」です。
シーリング工事はマンションの防水性と気密性を高めるために必要不可欠な工事になります。とはいってもあまり目立たない工事なので、どんな工事なのか分からない方は多いと思います。
施工箇所などはあとで詳しく説明しますが、主に資材同士を繋ぐ部分で使用され「コーキング」とも呼ばれています。
この記事では、マンション大規模修繕で行われるシーリング工事の施工箇所や施工手順、使われているシーリング材など分かりやすくご紹介いたします。
このページの目次
1.マンション大規模修繕での「シーリング工事」とは?
シーリング工事は建物の外壁コンクリートのつなぎ目や外壁と窓サッシや玄関ドア周囲などの隙間にシーリンク材を充填(じゅうてん:隙間を埋めること)する工事です。ゴム状のシーリング材を資材のつなぎ目や隙間に充填することで、見た目がよくなるとともに高い防水性と気密性が確保できるようになります。
1-1.マンションでのシーリング工事の施工箇所と重要性
マンションで実施する大規模修繕工事の際もシーリング改修工事は行われます。
施工箇所は既存シーリングの劣化状況や工事の施工範囲で変わりますが、主に外壁コンクリートのつなぎ目やタイルの目地、コンクリートと玄関ドアやサッシの隙間など、部材と部材のつなぎ目に生じる隙間にゴム状のシーリング材を充填していきます。
このシーリングの交換工事を行う一番の目的は防水性と部屋の気密性を高めることです。
外壁などで使われる部材はそれぞれ単体の物を重ね合わせて一つの外壁にしているので、部材と部材の間にどうしても隙間が生じてしまいます。その隙間をそのままにしていれば、当然のように雨風が侵入してしまいます。
そこで、部材と部材の隙間にシーリング材を充填することで雨水の浸水が防げるとともに、風も入らなくなるので部屋の気密性を高めることができるのです。
また、地震や台風などで大きな揺れが生じたときも、コンクリートやタイルなどの部材の動きに対してシーリング材が伸び縮みして緩和してくれます。というように、シーリング工事は建物の耐震性を高めるためにも重要な工事なのです。
1-2.シーリング材は概ね5年で劣化が始まる
シーリングの交換は大規模修繕工事のタイミング以外にも劣化状況によってその都度対応する必要があります。
使われるシーリング材で耐用年数に多少の違いはありますが、特に外部に面した箇所のシーリング材は常に太陽の紫外線や雨風の影響を受けているので、概ね5年程度でひび割れや剥離などの劣化が表れてきます。
高い位置のシーリンク材の交換は足場を設置する大規模修繕工事に合わせて行うことになりますが、手の届く範囲で劣化が進行している部分があればシーリング材は補修する必要があります。
シーリング材にひび割れや剥離(はくり:剥がれてとれること)などが発生していれば本来の役割が果たせなくなります。
そのため、マンションの管理組合や管理会社の管理員の方は定期的にシーリング材の劣化をチェックして的確にメンテナンスを行うようにしましょう。
2.マンション大規模修繕のシーリング工事の施工手順と注意点
ここまでシーリング工事についてお話してきましたが、この項では一般的なシーリング交換の施工手順と施工するときの注意点をご紹介します。
2-1.シーリング交換工事の一般的に施工手順
シーリング工事には交換のほかに「打ち増し」があり、打ち増し工事は既存シーリング材の上に新たにシーリング材を足す工事になります。ただし、打ち増しはシーリング材の劣化がそれ程進んでいないときに予防的な措置として行われる工事です。
ここでは、シーリング材の交換工事の施工手順をご紹介します。
2-1-1.既存シーリング材の撤去および清掃
硬化してひび割れなどが発生している既存のシーリンク材を剥がしていきます。
剥がし終わったら、シーリング材のカス取り除きや汚れなどを綺麗に清掃します。
2-1-2.マスキングテープ貼り
シーリング材の充填に伴って使用する薬剤が周囲に付着しないようにするため、マスキングテープを貼って養生します。
2-1-3.バックアップ材の取付け
清掃とマスキングテープでの養生が完了したら、シーリング材を充填する部分にバックアップ材(目地底の形成を目的として、シーリングを目地底に設ける副資材)を取り付けていきます。
バックアップ材の素材はポリエチレン発泡体で、充填するシーリング材の3面接着を防ぐ目的で使われます。
外壁のシーリング材は2面接着が基本。バックアップ材を使わないと目地底と両横側面の3面接着になってしまい、前項でご紹介したようなコンクリートやタイルなどの部材の動きに対してシーリング材が伸び縮みして緩和するといった機能が果たせなくなります。
そこで、シーリングを充填する目地の底にバックアップ材を取り付けることで3面接着が防げるようになるのです。
また、目地が浅いときは「ボンドブレーカー」と呼ばれる材料が使われます。
2-1-4.プライマーの塗布
バックアップ材の取付けが完了したら、新たに充填するシーリング材の接着性を高めるためにプライマーを均一に塗布していきます。
その際、目地横側面もムラなく均一に塗るようにします。
2-1-5.新規シーリング材の充填
専用のコーキングガンと呼ばれる器具を用いて、目地にシーリング材を充填していきます。
その際、コーキングガンに空気が入らないように注意するとともに、目地寸法に適したノズルを選定して目地底からゆっくり充填する必要があり、担当する作業員の腕にかかってきます。
2-1-6.ヘラで調整して養生を剥がせば完了
充填したシーリング材をヘラで圧着させ密着性を高めるとともに、余分なシーリング材を除去していきます。
最後に、養生として貼ったマスキングテープを剥がせば完了です。
2-2.シーリング工事の注意点!手抜き工事と天候には注意
シーリンク交換工事の一般的な施工手順をご紹介しましたが、2点ほど注意することがあります。
まず一点目は、シーリング工事はあまり目立たない工事ですが、思っているよりも意外に作業が難しい工事でもあります。
そこで、シーリング工事を担当する作業員の経験やスキルをチェックして、できるだけシーリング専門の作業員に担当してもらうことが重要になります。作業に慣れていない作業員が担当すると精度が低いため、手抜き工事になってしまう可能性があります。
2点目は、シーリング工事を行うときの天候です。
シーリング工事は一般的に気温15~25℃、湿度80%未満で曇天・無風状態がベストな作業環境とされています。
当然、この条件に合致した日程など分かるはずもないですが、雨天や強風のときに無理に工事を行ってしまうとシーリング材の機能が果たせなくなる可能性があります。そこで、雨や強風が予測される日程でのシーリング工事は中止するなど、事前に施工会社に申し合わせを行うようにしましょう。
3.シーリング材の種類と施工単価
ここまでシーリング工事の特徴や施工手順など説明してきましたが、最後にシーリング材の種類と施工単価の目安をご紹介します。
3-1.シーリング材の種類
一般的にマンション大規模修繕で使用されるシーリンク材は「不定形シーリング材」になります。
別に弾性シーリングとも呼ばれていますが、高粘着性の不定形な材料の総称であり、目地に充填する前はペースト状で目地に充填するとゴム状に硬化します。
この不定形シーリング材には、主に以下の5種類のシーリング材があります。
シーリンク材の種類と特徴
➀アクリル系
アクリル系のシーリング材は硬化すると弾性体になるため湿気の多い場所でも使用可能。主に住宅などの新築時のALCパネル目地などに使用されます。
➁シリコーン系
熱に強く耐久性が高いためガラス廻りや浴室などで使われます。
特徴として既存のシーリングがシリコーン系なら交換工事もシリコーン系でしか施工できず、さらな塗料との相性は悪く、上から塗ると塗料を弾いてしまいます。
➂変性シリコーン系
紫外線に強く耐久性が優れているとともに汚れが付着しにくい特徴を持っています。また、➁のシリコーン系とは違い塗料を上から塗っても弾くことはありません。このような特徴から、マンション大規模修繕でも一般的に利用されるシーリング材です。
➃ウレタン系
ウレタン系は耐久性が高く硬化したあとはゴム弾力性があることから、クラック(ひび割れ)や目地の補修に使用されます。
ただし、紫外線に弱くホコリを吸い込む特徴を持っているので一般的に塗膜(とまく:塗料を塗って幕を作ること)で覆って利用します。
➄ポリサルファイド系
耐久性が高いのでコンクリートの継ぎ目やタイルの目地などに使われます。ただし、接着力が高い代わりに表面に汚れが付きやすい特徴があります。
以上、主な種類のシーリンク材をご紹介しましたが、それぞれの部位や目的に合わせてシーリング材は使い分けられます。
3-2.シーリング工事の施工単価
次にシーリング工事の施工単価をご紹介します。
マンション大規模修繕で行われるシーリング工事は先程もご紹介した通り、「打ち増し工事」と「交換(打ち替え)工事」の2種類の工事があります。
ただし、打ち増し工事は既存シーリング材の劣化が進行していないときの予防的な措置として行われる工事なので、基本は「交換(打ち替え)工事」が行われます。それぞれの施工単価は以下のようになります。
シーリング工事の参考施工単価
・シーリング打ち増し工事:600円~900円/m
・シーリング交換(打ち替え)工事:800円~1,200円/m
あくまで参考単価ですがおおよそ上記の単価が目安になります。
施工会社の見積書にもシーリング工事として数量や単価が入っているので、使われるシーリング材とともに施工を担当する作業員の経験やスキルは事前にチェックしましょう。
4.まとめ
マンション大規模修繕工事の中でも重要な工事の一つ「シーリング工事」をご紹介しました。
シーリング工事は外壁コンクリートのつなぎ目や窓サッシや玄関ドア周囲などの隙間にシーリンク材を充填する工事です。
ゴム状のシーリング材を資材のつなぎ目や隙間に充填することで、マンション景観が向上するとともに防水性と気密性が実現します。
今回は施工手順やシーリンク材の種類、施工単価などシーリング工事を詳しく説明しましたが、大規模修繕工事のタイミング以外にもシーリング材の劣化が進行しているときはその都度補修する必要があります。
本文でも説明しましたが、マンションの管理組合の方は5年を目安に劣化状況を確認するようにしましょう。